帰宅困難になったらどうする?対策と待機・徒歩帰宅の判断

都市の歩道や駅を行き交う通勤・通学の人々 防災対策
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外出先や勤務先で大きな地震に見舞われたらどうしますか?
電車もバスも止まり、家族の顔が浮かべば一刻も早く帰りたくなると思います。こうして交通機関が止まり自宅へ帰れなくなった人を帰宅困難者と呼びますが、災害直後にいっせいに歩き出すことには思わぬ危険がひそんでいるとされています。

この記事では、内閣府や東京都が示す「むやみに移動を開始しない」という考え方を踏まえながら、待機か徒歩帰宅かの判断の目安、職場・外出先での備え、家族との安否確認の決め方を整理します。通勤・通学で街に出る方が今日から備えられるよう、簡単なチェックリストもご用意しました。

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帰宅困難者とは?なぜ「むやみに移動を開始しない」のか

大きな地震が起きたときには電車が止まり、道路も大混雑して自宅まで歩いて戻ることが難しくなる状況があります。こうした状態に置かれた人を「帰宅困難者」と呼びます。

東日本大震災で約515万人が当日中に帰れなかった

帰宅困難は特別な人だけに起こることではありません。2011年の東日本大震災では首都圏の交通網が麻痺し、当日中に帰宅できなかった帰宅困難者が首都圏全体で515万人発生したと推計されています。平日の日中に都市部にいた多くの人が帰宅困難者になったということです。

出典:平成23年版 消防白書(総務省消防庁)

なぜ「すぐに動き出さない」ことが大切なのか

国のガイドラインや自治体の対策では、発災直後は「むやみに移動を開始しない」ことが基本原則として示されています。

理由は主に2つです。まず多くの人がいっせいに動き出すと歩道や交差点が混雑し、将棋倒しや圧迫による負傷のリスクが高まります。次に歩行者や車が道路にあふれると消防車・救急車が通れず救助・消火活動が遅れます。大阪市はこの点を「駅への人の集中による集団転倒や建物の倒壊、落下物による死傷の危険、緊急車両の通行の妨げの恐れがある」と説明し、職場など安全な場所にとどまるよう呼びかけています。

こうした理由から、安全な場所にとどまる「一斉帰宅の抑制」が対策の基本方針とされています。東京都の条例が事業者に3日分の備蓄を求めているのも、それだけの期間とどまることを想定しているためです。

出典:内閣府 災害発生時における大規模な帰宅困難者等の発生への対策に関するガイドライン(令和8年1月)大阪市 災害発生時における帰宅困難者対策

防犯くん
防犯くん

地震が起きたら、すぐ家に帰っちゃダメなのかな。こんなときこそ早く帰りたいんだけど…。

防災さん
防災さん

気持ちはよくわかりますよ。でも皆がいっせいに動き出すと道路が混んで救急車や消防車が通れなくなってしまうんです。「動かない」ことが助けを必要としている人を間接的に助けることにもなりますよ。

「とどまる」ことを前向きに考える

安全な場所にとどまることは自分を守りつつ救助活動を支える行動でもあります。焦って歩き出す前にまず情報を集め安全を確保する。この「むやみに動かない」原則を家族で共有しておくだけでも、もしもの時の行動は変わるかもしれません。

待機か、歩いて帰るか|判断の目安

大規模な地震では帰宅を急ぐ気持ちが強まる一方で無理に歩くことがかえって危険な場合もあります。落ち着いて、今すぐ動くべきか、しばらくとどまるべきかを判断する材料を持っておきましょう。

距離の目安を知っておく

内閣府の首都直下地震対策専門調査会の資料では、自宅までの距離が10km以内の人は「帰宅可能」とされています。10〜20kmの範囲では距離が1km延びるごとに帰宅困難となる人の割合が約10%増加し20km以上になると「帰宅困難」と位置づけられています。

自分の職場や外出先から自宅まで何kmあるかをおおよそ把握しておくだけでも、いざというときの判断がしやすくなります。

出典:内閣府 首都直下地震対策専門調査会 資料

距離以外に考えたい材料

  • 時間帯:日が暮れた後は視界が悪くなり体力消耗も早まります。「明るいうちに自宅に着けるか」を確認しましょう。
  • 天候:暴風雨・猛暑・厳寒の中での長距離徒歩は熱中症や低体温症のリスクがあります。
  • 沿道・道路の安全:火災や建物被害、通行止めの情報があるルートは避けてください。出発前にラジオや自治体の緊急情報をできる限り確認します。
  • 家族と自分の状況:在宅の家族が安全な場所で待機できているなら、無理に動かず連絡が取れるまで待つのも合理的です。体調に不安があるときは距離にかかわらずとどまることを優先してください。

判断の早見表

次の表はあくまで目安です。複数の項目が「とどまる」方向を示すときは急いで動かないことをおすすめします。

判断の材料 「まずとどまる」を後押しする状況 「徒歩帰宅も選択肢」と考えやすい状況
自宅までの距離 20km以上(帰宅困難とされる) 10km以内(帰宅可能とされる)
時間帯 夜間・これから暗くなる 日中で明るいうちに着ける
天候 暴風雨・猛暑・厳寒 穏やかで歩ける天候
沿道・道路 火災や建物被害・通行止めの情報がある 大きな被害情報がなく道が確保されている
家族・体調 合流相手が安全に待てる/体調に不安 在宅家族が無事で自分の体調も良い

実際の判断は勤務先や学校の方針、自治体の情報、現場の状況を優先して最新の被害・交通情報を確認してから動き出しましょう。

まず「とどまる」ための備え(職場・外出先)

東京都帰宅困難者対策条例(第7条)は、事業者に「従業者の三日分の飲料水、食糧その他災害時における必要な物資を備蓄するよう努める」ことを求めています。あわせて同条は、施設や周辺の安全を確認したうえで従業者を施設内で待機させ、一斉に帰宅することを抑制するよう努めることも定めています。数量の目安は東京都の帰宅困難者対策ハンドブックが示しており、飲料水9L(1日3L×3日分)・食料9食・ブランケット1枚・携帯トイレ15回分(1日5回×3日分)とされています。

出典:東京都帰宅困難者対策条例東京都帰宅困難者対策ハンドブック

まず自分の勤務先にどのような備蓄方針があるかを事前に確認しておくと安心です。

個人でもデスク・バッグに最低限を

特に外出中や出張先で被災した場合、職場の備蓄にすぐアクセスできるとは限りません。普段から通勤バッグやデスク・ロッカーに最低限の「個人備蓄」を用意しておくと、いざというとき落ち着いて行動できます。

防犯くん
防犯くん

会社のデスクやバッグって、そんなにいろいろ入れられないよ。

防災さん
防災さん

全部そろえようとすると確かに大変ですね。まずは飲料水・携帯トイレ・モバイルバッテリー・歩ける靴の4点から始めるとかなり安心感が変わりますよ。

個人備蓄として用意しておくとよいものを紹介します。

  • 飲料水(小型ペットボトル):500mL〜1Lをバッグに1〜2本入れておきましょう。
  • 日持ちする行動食(羊羹・ビスケット・栄養補助食品など):個包装でかさばらず長期保存が利くものをデスクの引き出しにストックします。
  • 携帯トイレ:水道管の被害でトイレが使えなくなることがあります。2〜3個をバッグの底に入れておくだけで長時間の待機でも安心感が変わります。
携帯トイレの使い方|35回計算・凝固剤と防臭袋の違い・廃棄まで
携帯トイレの使い方を設置〜廃棄の7ステップで解説します。1人1日5回×7日=35回の備蓄計算式、凝固剤と防臭袋の役割の違い、袋型と組立型の使い分けを内閣府・東京備蓄ナビをもとに整理しました。

携帯トイレは出番が多いわりに準備している人が少ないグッズです。種類・選び方は上の記事に商品は下を参考にしてください。

  • モバイルバッテリー:充電が切れると家族への連絡や避難情報の確認ができなくなります。20,000mAh前後のものをバッグに常備しておくとスマートフォンを3〜4回ほどフル充電できる容量です。
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災害時の停電に備えたモバイルバッテリーの選び方をまとめました。スマホは安否確認や情報収集の生命線です。容量・充電タイプ・急速充電の有無など選び方のポイントを解説します。災害用バッテリー選びの参考にしてください。

スマートフォンの電源確保については上の記事も参考になります。

  • 歩きやすい靴(スニーカー):ロッカーにスニーカーを一足置いておくだけで、いざ歩く必要が生じたときの選択肢が広がります。
  • エマージェンシーシート:折りたたむとカード程度のサイズになる製品もありバッグのポケットに1枚忍ばせておけます。
  • 常備薬・救急用品:普段から薬を服用している方は数日分を携帯しておくことが特に重要です。
  • 小型ライト:停電や夜間の移動に備えてLEDライトをひとつ持っておくと安心です。
  • 少額の現金(小銭・公衆電話用):キャッシュレス決済が使えなくなる場面に備え、1,000〜2,000円程度の小銭をバッグに入れておきましょう。

まずは「水・携帯トイレ・充電・靴」の4点から始めて、徐々に追加していくのが続けやすい方法です。

徒歩帰宅を選ぶときの実践

どうしても自力で帰宅しなければならない状況も考えられます。平時のうちにルートを確認し、必要な道具をそろえておくことが推奨されています。

徒歩帰宅ルートを事前に確認しておく

できれば自宅までの複数のルートを日中と夜間の両方で下見しておくと良いとされています。ルート選びで意識したいポイントは次のとおりです。

  • 水・トイレ・休憩できる場所を把握しておく:コンビニや公園など途中で立ち寄れる場所を地図に書き込んでおきます。
  • 危険箇所を避けるルートにする:崖や急斜面の近く、川沿いの低地、年数の経った橋は地震後に危険度が高まる可能性があります。
  • 自治体の徒歩帰宅支援マップを活用する:平時にダウンロードしてスマートフォンに保存しておくと電波が不安定な状況でも参照できます。

災害時帰宅支援ステーションを知っておく

自治体とコンビニ・ファミリーレストラン・ガソリンスタンドなどが協定を結び、徒歩帰宅者へ水道水・トイレの提供やテレビ・ラジオからの災害情報の提供を行う「災害時帰宅支援ステーション」の取組があります。協力店舗にはステッカーが掲示されているとされていますので日ごろから確認しておくと心強いです。

出典:東京都防災ホームページ 帰宅困難者に対する支援

徒歩帰宅に備えて用意しておきたいもの

徒歩帰宅の持ち物は「とどまる備え」と多くが共通します。歩きやすい靴・携帯トイレ・水と行動食・モバイルバッテリーに加え、次の装備が特に重要です。

  • 両手が空くリュック:手さげバッグは長距離歩行に向きません。荷物をリュックにまとめておくと転倒時に手をつきやすく安全です。
  • 明かり(ヘッドライト):両手を空けたまま足元を照らせるヘッドライトが役立ちます。停電中の市街地は想像以上に暗くなることがあります。
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  • 雨具(レインウェア):傘は強風で使えなくなる可能性があります。両手を使えるレインウェアのほうが歩行中の安全性を保ちやすいです。
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  • 軍手・タオル:瓦礫をどかしたり、けがの応急手当に使ったりと用途はさまざまです。

日ごろから防災ポーチとして最低限のグッズを携帯しておくと、いざというときに慌てずに済みます。

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途中で日が暮れた、余震が続いている、雨や風が強くなってきたといった状況では、近くの安全な建物や避難所で休む、場合によっては引き返すという判断も選択肢のひとつです。

家族との安否確認・集合ルールを先に決める

災害直後は電話回線が集中してつながりにくくなる傾向があります。あらかじめ複数の連絡手段を知っておくと気持ちに余裕が生まれます。

災害時に使える連絡手段

  • 災害用伝言ダイヤル(171):固定電話や携帯電話から171に電話して音声メッセージを録音・再生できます。
  • web171(ウェブ版伝言板):インターネット経由でメッセージを登録・確認できます。音声通話が難しい環境でも活用しやすいとされています。
  • SNS・メッセージアプリ:LINEやXなどは音声通話よりも比較的つながりやすいとされています。グループチャットで家族全員の安否をまとめて確認できます。
  • 携帯各社の災害用伝言板:自分の安否情報を登録したり相手の情報を確認したりできます。

これらのサービスは毎月1日・15日などに体験利用できます。家族で一度実際に使ってみることをおすすめします。

災害時の連絡手段・情報の集め方を考える
災害時の連絡手段と情報の集め方をまとめました。災害用伝言サービスやLINE・SNSを使った家族との連絡方法、停電時でも使える情報収集の手段を解説しますので、いざというときのために家族で事前確認しておきましょう。

平時に話し合っておきたい3つのこと

① 連絡の起点役を決める

「遠方に住む親族を中継役にする」「まず〇〇に連絡する」といったシンプルな取り決めを作っておくと行動が整理されます。

② 集合場所を決める

自宅の近くの場所と少し離れた避難所の2段階で設定しておくと、状況に応じて使い分けできます。

③ 子どもの引き取りルールを確認する

小学校や保育園・幼稚園には災害時の児童引き渡しに関するルールがあります。誰が迎えに行けるか・行けない場合はどうするかを学校側の方針と合わせて家族内で確認しておきましょう。

どれだけ備えても災害直後はすぐに連絡が取れないことがあります。「相手が無事であることを前提に自分は安全を最優先に行動する」と家族で共有しておくと、無理な移動を避けやすくなります。

通勤・通学する人が今日からできる準備チェックリスト

「何かあってから考える」では、いざというときに動けない場面が出てきます。できるところから備えておきましょう。

  • 職場や通学先に最低限の備えを置いておく 水(500ml×2本程度)・携帯トイレ・モバイルバッテリー・スニーカー一足をデスクの引き出しや会社のロッカーに。
  • 徒歩帰宅ルートを家族と事前に確認しておく 自宅までの距離と所要時間、避けたい高架橋や川沿いのルートを把握しておくのが理想です。
  • 安否確認の方法と集合場所を家族で決める 171・web171・SNSのどれを使うか、集合場所はどこかを家族全員で共有しておきましょう。
  • 防災ポーチ(0次の備え)を毎日持ち歩く スマホ・充電ケーブル・ホイッスル・現金(小銭含む)・絆創膏を小さなポーチにまとめて通常のバッグに。
  • 勤務先・学校の待機方針と備蓄状況を確認しておく 職場の防災担当者に一度確認しておくと安心です。
  • 自宅や通勤経路のハザードをあらかじめ調べておく 国土交通省の「重ねるハザードマップ」で浸水想定・土砂災害リスクをまとめて確認できます。

まとめ

帰宅困難になったときの備えをまとめます。

  • むやみに移動を開始しない 地震直後の屋外は倒壊・落下物・群衆事故のリスクがあります。安全が確認されるまで待機することが推奨されています。
  • 待機か徒歩帰宅かは状況で判断する 職場・学校の備蓄状況、建物の安全性、家族の状況、ライフラインの復旧見込みを総合的に考えましょう。
  • とどまるための備えを事前に整えておく 水・食料・携帯トイレ・充電手段など、外出先で数日過ごせる最低限の備えを職場や通学先に確保しておきましょう。
  • 徒歩帰宅には服装・装備・ルート確認が欠かせない スニーカー・水分と軽食・ルートの事前確認が帰宅を助けます。帰宅困難者支援ステーション(コンビニ・ファミレス等に設置)を地図で確認しておくと心強いです。
  • 家族との安否確認手段は平時に決めておく 171・web171・SNS・集合場所など、連絡手段を家族全員が知っている状態にしておきましょう。

ご自身の通勤経路やご家族の状況に合わせて、できることから備えてみてはいかがでしょうか。