家庭でできる浸水対策|玄関・窓・トイレ逆流まで場所別の備え方

台風・大雨で冠水した道路のイメージ 台風・水害対策
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大雨の際に水が入ってきそうな場所はどこか把握できていますか?

家庭の浸水経路というと玄関や1階の窓を思い浮かべがちですが、実際には排水口からの逆流やトイレ・浴室から汚水が上がってくる被害も意外と多く発生しています。場所ごとの弱点を知って対策しておくといざというときの被害を大きく減らせます。

この記事では家庭でできる浸水対策を 玄関・サッシ・排水口・トイレ・車ガレージ・屋外排水の6つの場所別 にまとめてご紹介します。気になるところから読み進めてみてください。

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浸水被害の意外な経路と備えの基本

浸水と聞くと川の決壊や越水による 外水氾濫 がまず思い浮かびます。しかし、住宅街でよく発生するのはそれ以外の経路による浸水です。

  • 内水氾濫:短時間の大雨で下水道や側溝の処理能力を超え、雨水が地表にあふれる現象
  • 下水逆流:下水が処理しきれずトイレや洗面・浴室の排水口から汚水が逆流するケース
  • 窓・サッシからの吹き込み:暴風雨で横なぐりの雨がサッシの隙間から室内へ
  • 玄関ドアの下部:段差が低いとわずかな冠水でも室内に入る

大雨や台風で起こる災害は浸水・暴風・停電と幅広く、家庭の浸水経路もひとつではないとされています。玄関だけ土のうを積んでも別の経路から水が入ってしまうことがあるため、ご自宅の弱点を 場所別に整理して備えておく ことが大切です。

政府広報オンラインでも「レベル4」までに危険な場所から全員避難するよう呼びかけており台風シーズン前にチェックしておいた方が良いかもしれません。

まず確認:自宅の浸水リスク(ハザードマップ)

グッズをそろえる前にまず 自宅周辺の浸水リスク を知っておくことが大切です。「うちは大丈夫だろう」という思い込みではなく、データで確認してから対策のレベルを決めましょう。

国土地理院のハザードマップポータルでは自宅周辺の浸水想定区域(外水氾濫)・内水氾濫の見込み・土砂災害警戒区域・避難所の位置までまとめて確認できます。お住まいの自治体サイトでも独自の防災マップが公開されているので、両方目を通しておくとより詳しく分かります。

確認するときは自宅だけでなく 通勤・通学経路・お子さんの学校・職場 もチェックしておくと避難の判断もしやすくなります。

地図記号の読み取りや警戒レベルとの結びつけ方は、こちらの記事で詳しく整理しています。

ハザードマップの見方と警戒レベル|大雨・台風で迷わず動くための基礎知識
ハザードマップの見方と警戒レベルについて、大雨・台風前に知っておきたい基礎知識をまとめました。国土地理院ポータルの使い方、警戒レベル5段階の意味、垂直避難の選択肢、マイ・タイムラインの作り方まで解説します。

内水氾濫とは?外水氾濫との違いと家庭でできる備え

ハザードマップを見て「うちは浸水想定区域の外だった」と安心された方もいるかもしれません。ただし家庭の浸水はそれだけでは判断しきれない部分があります。

水があふれる現象は大きく2つに分けられます。

  • 外水氾濫:川の水が堤防を越えたり堤防が壊れたりして市街地へ流れ込むもの
  • 内水氾濫:市街地に降った雨が下水道や排水路で処理しきれず地表にあふれるもの

国土交通省は内水氾濫を「都市に降った雨が河川等に排水できずに発生する」ものと説明しており、下水道が担うのはこの「内水」の排除だとしています。

国土交通省 上下水道・下水道による浸水対策

被害額で見ると内水氾濫の比重は小さくありません

実際に金額でみた被害は内水氾濫のほうが大きいこともあります。国土交通省の資料では、1993年から2002年の10年間の水害被害額のうち、内水氾濫によるものが全国で約半分、東京都では80%を超えていたとされています。

国土交通省 水害対策を考える・都市部で顕在化する「内水氾濫」

少し古い集計になりますが、市街化が進んで雨水が地面にしみ込みにくくなっている傾向は現在も変わっていません。東京都も市街化の進行で雨水が地下に浸透しにくくなり、短時間で川へ集中して流れ込むようになったこと、時間雨量50mmを超える豪雨が頻発していることを都市型水害の背景として挙げています。

東京都防災ホームページ・都市型水害に対する取組

家庭での備えは「入口」と「排水口」の2方向

内水氾濫が厄介なのは、川が近くになくても起きうる点です。浸水想定区域の外でも短時間の大雨で道路が冠水したり、下水管が満水になって室内の排水口から水が上がってきたりします。

家庭でできることは次の2方向に整理できそうです。

  • 外から入ってくる水を止める:玄関・サッシなど地面に近い開口部を塞ぐ(次章の①玄関・出入口、②サッシ・掃き出し窓)
  • 内から上がってくる水を止める:トイレ・浴室・洗濯機の排水口を塞ぐ(以下の④トイレ・洗面・浴室)

外からの侵入だけを警戒していると足元の排水口から汚水が上がってくるケースに対応できませんので両方セットで考えておいた方が安心です。

場所別 家庭でできる浸水対策

① 玄関・出入口

浸水経路としてもっとも分かりやすいのが玄関です。地面に近い段差ほど水が入りやすくわずか数センチの冠水でも室内に水が回ってしまいます。

  • 水のう・吸水土のう:従来の土のうは重く扱いにくいので家庭では給水で膨らむ 吸水土のう や、ビニール袋に水を入れた 簡易水のう が現実的。玄関ドアの前に並べて水の侵入を抑える
  • 止水板:玄関の引き戸やドアに突っ張り式で取り付けるタイプ。シーズン前に1枚備えておくと毎年の備えが楽になる
  • 段差カバー・隙間テープ:ドア下部の隙間や郵便受けからの吹き込みも対策できる
  • 室内側の家具を移動:玄関に置いた家電や紙類は上の段やリビングへ移しておく

簡易水のうの作り方と「10cm」という限界

もっとも手軽なのが家庭のごみ袋で作る簡易水のうです。
作り方は自治体がそろって案内しており、手順はほぼ共通しています。

  1. 45リットル程度のごみ袋を二重、三重に重ねる(1枚だと破れやすいため)
  2. 半分ほど水を入れる。40〜45リットル袋の半分でおよそ20kgが目安です
  3. 袋の空気を抜いて口をきつく結ぶ

北九州市上下水道局・家庭での下水の逆流を防ぎましょう「逆流防止対策」/草加市・家庭での簡易水防〜「水のう」の活用をおすすめします〜

ここで把握しておいた方が良いことが 限界の高さ です。葛飾区では、ごみ袋の水のうだけを並べる場合は 10センチメートル程度の水深が限度 としています。積み重ねれば高さは出せますが袋だけで何十センチも止められるわけではありません。

葛飾区・家庭でできる簡易水のう等について

半分入れた袋がおよそ20kgという重さもあらかじめ知っておきたいところです。
玄関幅の分だけ並べるとなると、水を入れる作業も運ぶ作業も想像より重労働になります。水が迫ってから慌てて作るのではなく、シーズン前に一度試しておくと当日の段取りが変わってきます。

10cmを超えそうなら「水のう入り防水壁」に切り替える

想定される浸水がそれ以上になりそうならば、水のうを段ボールと組み合わせて壁にする方法があります。取手市が「水のう入り防水壁」として手順を公開しています。

  1. 40リットルのポリ袋に 3分の1から半分程度 水を入れ空気を抜いて結ぶ
  2. 空のポリ袋でもう一重に包む(破れ対策)
  3. 段ボール箱に入れてガムテープで閉じる
  4. ブルーシートの上に並べ、シートで包み込む
  5. 2段から3段積み にして高さを出す

取手市 安全安心対策課・身近なもので簡単にできる「水のう入り防水壁」の作りかた

設置で大切なのは置く向きです。取手市は 片側が壁に面するような形で使う ことを勧めており、玄関や門扉の前がまさにこれにあたります。左右が開けた場所に一列だけ置いても水は横から回り込んでしまいます。
両端が壁や門柱で挟まれた区間を選ぶ と少ない枚数で効きます。

見落としやすい玄関まわりの侵入経路

ドアの前を塞いでも別のすき間から水が入ることがあります。

  • ドア下部のすき間:玄関ドアは通気のため下に数ミリの隙間があることが多く水位が低くてもここから入ります。隙間テープや段差カバーで塞げます
  • 郵便受け(ドアポスト):ドアに直接組み込まれたタイプは高さが低く、横なぐりの雨や水位上昇で浸水口になります。内側からテープで目張りしておくと安心です
  • 通風口・換気ガラリ:勝手口や玄関脇の壁にある通気口も同様です
  • 引き戸のレール:引き違いの玄関戸はレール部分が構造的に低く開き戸より水が入りやすいとされています

止水板を検討する場合も、玄関の幅とハザードマップで想定される浸水の深さ を先に測っておくと選びやすくなります。幅が広い玄関ほど水圧を受ける面積が大きくなるため、突っ張り式の耐えられる範囲を製品ごとに確認しておきましょう。

防犯くん
防犯くん

水のうって玄関の前にたくさん並べておけば安心なんじゃないの?

防災さん
防災さん

ごみ袋だけだと10cmくらいが目安なんです。それ以上を狙うなら段ボールとブルーシートを組み合わせて壁で挟まれた場所に積むのがコツですよ。

この場所向けの商品

家庭で扱いやすい簡易水のう・吸水土のう

玄関に常設できる止水板

② サッシ・掃き出し窓

ベランダに出る掃き出し窓はベランダの排水口が詰まると水位が上がり、 サッシのレールから室内に逆流 しやすい場所です。横なぐりの雨でサッシの隙間から吹き込むケースもあります。

  • 吸水土のう をベランダ側の窓沿いに並べてベランダ側の水位を下げる
  • タオルをサッシのレールに詰める といった応急処置も短時間なら有効
  • 普段からベランダの排水口を掃除しておくことで雨水のたまりを予防できる
  • 室内側のカーテンを閉じておくと万一吹き込んだ水が室内に広がるのを少し抑えられる

ベランダの排水口を掃除する手順はこちらの記事でまとめています。

ベランダ排水溝の詰まり掃除|ゲリラ豪雨の前にやる3ステップと階下漏水を防ぐコツ
ベランダ排水溝の詰まりを放置するとゲリラ豪雨で越水・階下漏水のリスクがあります。詰まりやすい原因5つ・掃除3ステップ・便利アイテム5選・NGパターン・季節ごとのメンテナンス頻度まで、マンション住まい向けにまとめました。

この場所向けの商品

ベランダ側に並べる吸水土のう

③ 排水口・排水溝

屋外の排水口や排水溝はふだんは雨水を流す通路ですが、下水処理能力を超えると そこから水があふれ出す 「内水氾濫」の入口になります。屋内の排水口(キッチン・洗面・浴室)も逆流の経路になります。

  • 水のうを詰める:屋外の排水口や雨水ますに小さめの水のうを置いて逆流を抑える
  • マンホール・側溝の蓋に注意:水位が上がるとマンホールの蓋が浮き上がることがある。冠水時は近づかない
  • 雨水ますの周辺を整理:物を置いたり蓋を塞いだりしないようにする
  • 屋内排水口の点検:排水トラップに水を満たしておくと軽い逆流ならにおいや汚水の侵入を抑えられる

水のうは玄関用に備えるものを大小組み合わせておくと排水口にも転用できて便利です。

④ トイレ・洗面・浴室

見落とされがちですが家庭の浸水で 大変な被害になりやすいのがトイレや浴室からの汚水逆流 です。下水道が処理しきれない大雨の際に便器や排水口から汚水が室内に逆流するケースがあり後片付けが極めて大変になります。

これは前述の内水氾濫がもたらす被害のひとつです。北九州市上下水道局は急激な水位上昇で 下水管が満水の状態になり、トイレや風呂場、洗濯機の排水口などから水が吹き出すことがある と説明しています。玄関を塞いでも防げない、内側から上がってくる水がこれにあたります。

北九州市上下水道局・家庭での下水の逆流を防ぎましょう「逆流防止対策」

対策はシンプルで便器・洗面・浴室の排水口に水のうを置いて物理的に逆流を止める のが基本です。同局も「水のうを便器の中に入れておく」ことを案内しています。市販の小型水のうのほかビニール袋に水を半分入れて口を結んだもので代用できます。

設置の手順

  1. 大きめのビニール袋(45L 程度)を二重にして中に水を半分ほど入れる
  2. 空気を抜きながら口をしっかり結ぶ
  3. 便器の中・洗面のボウル・浴室の排水口の上に置く
  4. 浮き上がりや位置ずれがないかときどき確認する

使用後の処分

逆流があった場合の水のうは汚水で汚れているためそのままごみに出さず、 新聞紙でくるんで袋詰めしてから 自治体のルールに沿って処分しましょう。素手で触らずゴム手袋を使うのが安心です。

この場所向けの商品

トイレ・排水口に置きやすい小型水のう

⑤ 車・ガレージ

車は 浸水で全損になる被害が多い ため台風接近の早い段階で対策しておくのがおすすめです。一度水没すると、エンジン内部や電装系の損傷で修理不可になることもあります。

  • 高台や立体駐車場の上階に移動:浸水が予想される地域では台風接近の前日までに動かしておく
  • 車両保険の確認:水害が補償対象かを契約内容で確認しておく
  • ガレージのシャッター隙間対策:シャッター下に吸水土のうを並べると応急対策になる
  • 浸水後は車に近づかない:エンジンが冠水するとショート・感電の危険があり、ドアを開けると水が一気に入る/むやみにエンジンをかけない/契約の保険・JAF・ディーラーへ連絡する

地下駐車場は短時間で冠水することがあるため台風接近時は避けるのが安心です。

⑥ 屋外の排水まわり

雨どい・側溝・雨水ますに落ち葉やゴミが詰まると内水氾濫の引き金になります。シーズン前にできる点検を済ませておきましょう。

  • 雨どい・側溝の清掃:シーズン前にゴミ・落ち葉を取り除く。高所作業は2人以上で安全に
  • 雨水ますの蓋まわり:物を置いて雨水の流入を妨げない
  • 窓・サッシまわりのシーリング点検:ひび割れ・劣化があれば応急的に 浸水・防水テープ で補修する
  • エアコン室外機・換気口:周囲のゴミを除いて水はけを確保する/低い位置の換気口は浸水時に水路になることがある

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応急のシーリング補修に使える浸水・防水テープ

どうしても水が入ってしまったら

備えていても想定を超える大雨で水が入ってきてしまうことはあります。そのときに大切なのはグッズより 安全な行動の選択 です。

避難判断を最優先する

警戒レベル4「避難指示」が出たら、危険な場所から全員避難するように政府広報も呼びかけています。レベル3「高齢者等避難」の段階でも、不安があれば早めに動くのが安心です。家族の中に避難に時間がかかる方がいる場合はより早めの判断が望ましいとされています。

垂直避難という選択肢

道路がすでに冠水していて外に出るのが危険なときは無理に避難所へ向かわず、自宅の2階以上や近隣の高い建物に移動する 垂直避難も選択肢です。マンションなら共用廊下、戸建てなら2階の部屋へ。水が引くまで待つほうが安全なケースもあります。

感電・けがに注意

  • 床上浸水のときはブレーカーを落としてから 行動する
  • 濡れた手でコンセントや家電に触れない
  • 屋外は 長靴より裸足や運動靴のほうが脱げにくく安全 とされる場合がある。割れたガラスや尖ったものへの注意も忘れずに
  • 汚水を含む水に触れた肌の傷は感染のリスクがあるためゴム手袋・長袖で守る

地下・車に近づかない

地下街・地下駐車場は短時間で冠水し扉が水圧で開かなくなることがあります。屋外駐車場の車も同様でドアを開けると水が一気に車内に入ります。

後片付けの注意点

水が引いたあともすぐに片付けに飛びかかるのは避けましょう。汚水や残った危険物があるため安全に進める順番があります。

  • 片付ける前に被害状況の写真を撮る:罹災証明や保険申請の証拠になる。浸水の高さがわかるよう家具やドア枠と一緒に撮影
  • 自治体への連絡:罹災証明書の申請窓口や生活再建支援の情報を自治体の公式サイト・広報で確認する
  • 消毒・乾燥:汚水が触れた床・家具は中性洗剤で洗ったあと消毒用エタノールや次亜塩素酸ナトリウムで消毒する。扇風機や除湿器でしっかり乾燥させる
  • 健康被害の予防:浸水した食品は無理に使わず処分する/井戸水は飲まない/カビ対策のため、早めの乾燥と換気を心がける
  • 復旧期は備蓄を使う:水道や物流が戻るまで在宅備蓄の飲料水・簡易トイレ・ライトを使う

ふだんの備蓄が復旧期の暮らしを支えてくれます。在宅避難の備蓄全体についてはこちらの記事で詳しくまとめています。

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まとめ

家庭でできる浸水対策について場所別の備えと避難・後片付けまでをご紹介しました。最後に要点を振り返ります。

  • ① 玄関:水のう・止水板・段差カバーで水を止める
  • ② サッシ:吸水土のう・タオルで吹き込みを抑える
  • ③ 排水口:水のうで逆流を抑えマンホールには近づかない
  • ④ トイレ・浴室:便器・排水口に水のうを置いて汚水逆流を防ぐ
  • ⑤ 車・ガレージ:早めの高台移動/シャッター隙間の対策/浸水後の車には近づかない
  • ⑥ 屋外排水:シーズン前の側溝・雨どい清掃/劣化部分は防水テープで補修
  • 水が入ったら:警戒レベルに沿った避難判断と垂直避難・感電に注意
  • 後片付け:写真→自治体連絡→消毒・乾燥の順で

まずはご自宅のハザードマップ確認といちばん心配な場所の対策から始めてみてはいかがでしょうか。