避難所での生活が長引いて断水も続いているとき生理用品やおむつはどうやって用意しておきますか?
水や食料の備えは意識していても、生理用品やおむつ、尿とりパッドといった「衛生用品」までは手が回っていない方も多いのではないでしょうか。ところが衛生用品は避難所で支援物資が届くのが遅れがちなうえ、好みやサイズが合わないことも少なくありません。とくに生理用品は「人前ではもらいにくい」という声もあり必要な人に行き渡らないことが課題として指摘されています。
この記事では、生理用品の備えを中心に乳幼児のおむつ、高齢者・介護が必要な人の尿ケア、そして家族みんなに共通する衛生用品まで属性ごとに必要量の考え方と選び方、衛生の保ち方をまとめてご紹介します。
なぜ衛生用品は「多めに・自分で」備えるのか
衛生用品は食料や水とくらべて「後回し」にされやすい備えです。けれども避難生活では清潔を保てないことが体調や心の負担に直結します。なぜ自分で多めに備えておくとよいのか、3つの理由から考えてみます。
1つめは、支援物資が届くまでに時間がかかること。 災害直後の支援は飲料水や食料が優先されやすく生理用品やおむつといった衛生用品は到着が遅れる可能性があります。届いたとしても種類やサイズが限られてしまい普段使っているものと違うといったケースも考えられます。
2つめは避難所では「言い出しにくい」場面があること。 日本トイレ研究所の記事では、避難所で生理用品を「公衆の面前でもらいに行くのが恥ずかしい」「経血量が多くてたくさん必要なのに遠慮して追加でもらえない」といった声が紹介されています。同記事によると2015年の内閣府の報告では生理用品を備蓄している自治体は15%ほどにとどまっていたとされ、近年は増えてきているものの行政の備蓄はあくまで応急的なものと考えておくほうが安心です。
3つめは衛生を保つこと自体が健康につながること。 断水中は生理用品やおむつをこまめに取り替えにくくなり肌トラブルや感染のリスクが高まると指摘されています。布ナプキンや吸水ショーツを使っている方も断水していると普段どおりのお手入れが難しくなるため、使い捨てタイプも合わせて備えておく考え方があります。
内閣府男女共同参画局の「災害対応力を強化する女性の視点~男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン~」(令和2年5月公表)でも備蓄チェックシートの「女性用品」に生理用品や使い捨て下着などが挙げられています。「行政が用意してくれるはず」と当てにしすぎず、最低限は自分と家族の分を自分で備えておく——これがこの記事の土台になる考え方です。
まずは家族構成を思い浮かべて誰にどんな衛生用品が必要かを書き出すところから始めてみましょう。

生理用品やおむつ位は避難所に行けばもらえるんじゃないの?

届くのが遅れたり、サイズや種類が合わなかったりすることがあるんです。生理用品は「人前でもらいにくい」という声もあります。最低限は自分と家族の分を普段より多めに備えておくと安心ですよ。

女性の生理用品の備え
生理は災害時でも止まってくれません。むしろ環境の変化やストレスで通常時より早く来たり量が増えたりすることもあります。「足りなくなってから困る」ことのないように少し多めに備えておくと安心です。
必要量の目安は「ふだんの量×日数+予備」
備える量に決まった正解はありませんが考え方はシンプルです。普段の1回の生理で使う枚数を想定する避難日数分そろえるのが基本になります。生理は1回が1週間ほど続くことが多いため、最低でも1サイクル分(およそ1週間分)、できれば予備を加えて多めに用意しておくと長引いたときにも慌てずにすみます。
経血量には個人差が大きいので「○枚あれば十分」と一律には言いにくい部分です。ふだん多めに使う方は、その分も見込んで多めに備えておきましょう。会社や学校に置いておく防災用品にも最低3日分ほど入れておくと外出先で被災したときに役立ちます。
種類は「使い分け」で考える
生理用品にはいくつかの種類があり、それぞれ災害時の向き・不向きがあります。一つにしぼらず組み合わせて備えておくと状況に対応しやすくなります。
- 紙ナプキン(昼用・夜用):使い捨てで衛生的。取り替えるだけで済むため断水時にもっとも扱いやすいとされる基本の備えです。昼用と夜用、量の多い日用を組み合わせておくと安心です。
- タンポン:かさばりにくく、活動量が多い場面で使いやすいという声があります。ただし長時間の連続使用は避けるよう案内されることが多く、こまめに取り替えられる枚数を備えておく必要があります。
- 吸水ショーツ・布ナプキン:くり返し使えてゴミが出にくい一方で断水中は洗濯や手入れが難しくなります。「平常時は布、断水時は使い捨て」と切り替える前提で使い捨てタイプも必ず併用しておくとよいでしょう。
この他にサニタリーショーツや替えの下着、おりものシートも合わせて備えておくと着替えにくい避難生活で清潔を保ちやすくなります。中身が見えないポーチや紙袋に小分けにしておくと人目を気にせず持ち運べます。
取り替えと処理の備えも忘れずに
断水中はこまめに手を洗えないため、手指消毒液やウェットティッシュを一緒に備えておくと付け替えのときに役立ちます。使用後の生理用品は、においや衛生面に配慮して防臭袋や中身の見えないゴミ袋に入れて処理できるようにしておくと安心です。捨て場所が限られる避難所では、こうした「処理する備え」が意外と重要になります。
女性の防災ポーチに何を入れるかは、こちらの記事でもまとめています。

乳幼児のおむつ・おしりふきの備え
赤ちゃんがいる家庭では、おむつとおしりふきが切れると一気に困ります。避難所に大人用の物資はあっても赤ちゃん用は数が少なく、到着も遅れがちといわれています。日頃から多めにストックしておきましょう。
おむつは「1日の枚数×日数」で計算する
おむつの必要量も考え方は生理用品と同じです。ふだんの1日の使用枚数に想定する避難日数をかけて算出します。最低3日分、できれば1週間分を目安に備えておくと安心です。月齢が低いほど1日の枚数は多くなるため、わが子の今の使用ペースを基準に計算してみてください。
注意したいのがサイズです。備蓄している間に赤ちゃんは成長しますし避難が長引けば今のサイズが合わなくなることもあります。今のサイズとワンサイズ上を少しずつ備えておくと買い替えのタイミングを逃しても対応しやすくなります。ローリングストックで使いながら更新していくのがおすすめです。
おしりふきは多めに、大人にも使える
おしりふきは、おむつ替えだけでなく手や体をふく、汚れを拭き取るなど多用途に使えます。被災時は体調を崩して下痢になる赤ちゃんもいるため、いつもより多めに備えておくと安心です。水が使えないときには家族の体ふきや簡単な掃除にも転用できるので、「赤ちゃん専用」と考えずに家庭全体の衛生用品として多めに持っておく考え方もあります。
万一おむつが足りなくなった場合にはレジ袋とタオルやペットシートを組み合わせて応急的に代用する工夫が紹介されることもあります。あくまで一時しのぎですが知っておくといざというときの選択肢になります。
赤ちゃん・子どもの防災全般については、こちらの記事も合わせてご覧ください。

高齢者・介護が必要な人の備え
大人用おむつや尿とりパッドを使っている方がいる家庭でも備えの考え方は同じです。むしろ高齢の方は環境の変化で体調を崩しやすく衛生を保てないことが健康悪化につながりやすいため、優先して備えておきたい項目です。
大人用おむつ・尿とりパッドは、ふだんの1日の使用量に避難日数をかけて最低3日分、できれば1週間分を用意します。パッドはおむつと組み合わせると交換回数を減らせるため断水時に役立ちます。サイズや吸収量がその人に合っているかも確認しておきましょう。
加えて、清拭シート(体ふきシート)や口腔ケア用品も大切です。入浴や歯みがきが十分にできない避難生活では口の中が不衛生になりやすく、誤嚥性肺炎などのリスクが高まるとされています。水のいらない歯みがきシートや液体歯みがき、マウスウォッシュを備えておくと水が乏しい状況でも口腔ケアを続けやすくなります。

水が出ないと歯みがきはあきらめるしかないのかな?

そんなことはありません。歯みがきシートや液体歯みがき、マウスウォッシュなら水が乏しくても口の中を清潔に保てます。口腔ケアは誤嚥性肺炎の予防にもつながるので高齢の方ほど切らさずに備えておきたいですね。
持病があり常用している薬がある場合は、お薬手帳のコピーや数日分の予備とあわせて衛生用品も一式まとめておくと避難がスムーズです。在宅介護をしている家庭の備えはこちらの記事で解説しています。


みんなに共通する衛生用品
属性を問わず家族全員に必要になる衛生用品もあります。「水が使えない」前提で清潔を保つための道具をひととおりそろえておきましょう。
- 手指消毒液・ウェットティッシュ:食事の前やトイレのあと、こまめに手を清潔にするための基本。アルコールタイプとノンアルコールタイプを使い分けられると肌が弱い方や子どもにも対応できます。
- 体ふきシート・水のいらないシャンプー:入浴できない日が続いても体をさっぱり保てます。汗や汚れによる肌トラブルやにおいを防ぐのに役立ちます。
- 口腔ケア用品:歯みがきシート、液体歯みがき、マウスウォッシュなど。水が乏しくても口の中を清潔に保てます。
- マスク:避難所など人が集まる場所での感染症対策に。粉じんが舞う被災現場でも役立ちます。
- 防臭袋・ふた付きの容器:使用済みの衛生用品やおむつのにおい対策に。ゴミ収集が止まる期間を見越して多めに備えておくと安心です。
水が使えないトイレ環境では携帯トイレと衛生用品をセットで考えておくと安心です。使い方や必要数はこちらにまとめています。

水を使わずに清潔を保つ工夫は、こちらの記事も参考になります。

ローリングストックで切らさない
衛生用品は、買って備蓄棚にしまい込むより**ふだん使いながら買い足していく「ローリングストック」**が向いています。使った分を補充する習慣にしておけば、いざというときに「気づいたら期限切れ」「サイズが合わない」という事態を防げます。
特に次の3点は定期的に見直しておきましょう。
- 子どものおむつサイズ:成長に合わせて今のサイズとワンサイズ上を更新していく。
- 生理用品の量や種類:体調やライフステージの変化に合わせて見直す。妊娠・授乳期や更年期で必要なものが変わることもあります。
- 保管場所の分散:自宅の一か所にまとめるだけでなく非常持ち出し袋や車、職場にも少し分けておくと被災した場所で対応しやすくなります。
妊娠中の方は母体と赤ちゃんを守るための備えも合わせて確認しておくと安心です。

まとめ
災害時の生理用品・おむつをはじめとする衛生用品の備えについて、女性・乳幼児・高齢者と属性別の必要量の考え方とみんなに共通する衛生用品までご紹介しました。
衛生用品は支援が届くのが遅れがちで好みやサイズも人それぞれです。「ふだん使う量×日数+予備」を目安に、最低3日分、できれば1週間分を自分と家族の分だけ多めに備えておきましょう。そしてローリングストックで使いながら更新し、いつでも切らさない状態を保つことが大切です。
水や食料と同じように清潔を保つ備えも「命と健康を守る備え」のひとつです。今日できるところから家族に合わせた衛生用品をそろえてみてください。


