停電でも使える扇風機の選び方|充電式・乾電池式・ポータブル電源を稼働時間で比較

灯りの落ちた室内に置かれた扇風機のイメージ 防災グッズ
この記事は約12分で読めます。

暑い夜に停電が起きたとき、手元の扇風機は何時間くらい動かせるでしょうか?

停電では電化製品が止まり当然ながら夏場にはエアコンや扇風機も止まることになります。しかしコンセントがなくても風を送る手段もあります。

この記事では停電時に扇風機を回す4つの電源手段を比べた上で「結局それは何時間動くのか」を計算式と早見表で確かめていきます。

停電でも使える扇風機の選び方|充電式・乾電池式・ポータブル電源を稼働時間で比較

スポンサーリンク
まとめて用意できるこちらの防災セットを購入することも準備時間の短縮/長期的なコスト削減の面からおすすめです。
おすすめ 「転がす」「背負う」「持つ」3WAYキャリーリュック採用 ものすごい防災セットシリーズ
おすすめ
おすすめ 防災士厳選の防災グッズ39点セット【ディフェンドフューチャー】

停電した部屋で扇風機に何ができるのか

まず扇風機は風を送る機器でありエアコンのように室温そのものを下げる機器ではありません。閉め切った部屋で回し続けても部屋の温度は下がらないままです。

それでも風が意味を持つのは肌に当たった風が汗の蒸発を促すからです。汗が蒸発するときに体の熱が奪われるために同じ室温でも涼しく感じられます。

ただしこの仕組みには弱点があります。湿度が高いと汗そのものが蒸発しにくくなり風を当てても体温が下がりにくくなります。
環境省は暑さ指数(WBGT)について、「人体の熱収支に与える影響の大きい ①湿度、②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、③気温の3つを取り入れた指標です」と説明しています。暑さを評価する上で湿度は気温と並ぶ要素として扱われているわけです。

出典:環境省 熱中症予防情報サイト「暑さ指数(WBGT)とは」

つまり扇風機は停電時の暑さ対策の主役になり得ますが、それだけで乗り切れるものではありません。水分と塩分の補給、体を直接冷やすグッズ、そして風の通り道をつくる換気と組み合わせてこそ効いてきます。

防犯くん
防犯くん

扇風機を回していれば部屋も涼しくなるんじゃないの?

防災さん
防災さん

風は汗の蒸発を助けてくれますが室温そのものは下がらないんですよ。体を直接冷やすグッズも一緒に用意しておいた方が涼しくなりますよ。

停電中に体を冷やす順番については、こちらの記事でまとめています。

夏の停電はなぜ危ない?熱中症から命を守る冷やす順番と暑さ対策
夏の停電で命を守る「冷やす順番」と電気を使わない暑さ対策をご紹介します。猛暑日にエアコンが止まると室温は急上昇。なぜ夏に停電が起きるのか、首・脇・足の付け根を冷やす順序、夜間停電への備えまでまとめました。

停電で扇風機を回す4つの電源手段

コンセントが使えない状況で風を送る方法は大きく4つに分かれます。ちなみにここで扱うのは床や机に据えて使うサイズがメインです。手に持って顔に当てる携帯扇風機をお探しの方は、こちらの記事をご覧ください。

ハンディファンおすすめ|静音・大容量・乾電池式まで防災も見据えた選び方
ハンディファンのおすすめを風量・静音・バッテリー持続とタイプ別に解説します。停電や避難所でも使える乾電池式の強みやリチウム電池・首かけ型の安全な使い方まで防災も見据えて選ぶコツを紹介します。
電源手段 停電中の電気の継ぎ足し 他の家電にも使えるか 向くシーン
①バッテリー内蔵のコードレス扇風機 電源が復旧するまで基本的に不可 不可(扇風機専用) 在宅避難・ベランダ・屋外作業
②ポータブル電源+手持ちの扇風機 ソーラーパネルや車から充電できる スマホ・照明・冷蔵庫にも回せる 在宅避難・長期停電
③乾電池式扇風機 電池を買い足せば何度でも復帰 不可(扇風機専用) 避難所・買い置きで備える人
④シガーソケット式 車のエンジンをかければ充電できる 車内の他機器と電源を分け合う 車中泊避難・帰省中の停電

①は買ってすぐ使える手軽さが魅力ですが、内蔵バッテリーを使い切ると停電が続くかぎり復帰できません。
②は初期費用がかさむ代わりに扇風機以外の家電にも電気を回せます。
③は電池さえ手に入れば何度でも立ち上がるため、復旧の見通しが立たない場面で強みが出ます。
④は車という大きなバッテリーを使える一方で駐車中のアイドリングには一酸化炭素中毒や燃料切れの問題がついて回ります。

備えとして考えるならば、①か③を1台持ちつつ②を家全体の電源として押さえておく組み合わせが現実的です。

「何時間回るのか」を計算する

ここからがこの記事の本題です。
カタログの「連続運転○時間」は多くの場合いちばん弱い風量での数字で、強風で回せばその通りにはいきません。自分で見積もる方法を押さえておけばどのくらい使用できるか把握することができます。

計算式は次のとおりです。

稼働時間(時間) = バッテリー容量(Wh) ÷ 扇風機の消費電力(W) × 0.8

0.8はバッテリーの電気を家電向けに変換するときのロスを見込んだ係数です。実際の数字は風量や気温、バッテリーの劣化具合で前後します。

モバイルバッテリーのように容量がmAhで書かれている場合は次の式でWhに直せます。表記の多くはセル電圧3.7V(~3.85V)が基準なので、10,000mAhはおよそ37Wh程度になります。

Wh = mAh ÷ 1000 × 電圧(V)

消費電力は風量で10倍以上変わる

計算に入れる消費電力は機種よりも風量で大きく動きます。パナソニックは自社のDCモーター機とACモーター機を比べた数字を公表しており、最小風量・首振りオフの条件でDCモーター搭載のF-C339Dが1.5W、F-C337Dが1.2W、ACモーター搭載のF-C324Dが21Wとしています。
同じ「扇風機」でも弱運転なら10分の1以下の電力で回るわけです。

出典:パナソニック「快適さと省エネを実現するDCモーター」(当社比。最小風量運転時・首振りオフでの比較)

強風側も見ておきます。山善の羽根径30cmのDCモーター扇風機YLXP-AJD301は定格19W、風量6の運転で8.2Wと公表されています。

出典:山善 DCモーターリビング扇風機 YLXP-AJD301

つまり実用域はDCモーターの弱で1〜2W、中風量で8W前後、最大風量で20W弱。ACモーターの扇風機なら40W前後を見ておくとよいでしょう。

稼働時間の早見表

上の消費電力を電源容量と掛け合わせると以下のようになります。

電源 2W(DCの弱) 8W(DCの中) 19W(DCの強) 40W(AC扇風機)
モバイルバッテリー 10,000mAh(約37Wh) 約15時間 約3.7時間 約1.6時間 約0.7時間
ポータブル電源 500Wh 計算上200時間 約50時間 約21時間 約10時間
ポータブル電源 700Wh 計算上280時間 約70時間 約29時間 約14時間

表の見方をひとつ補っておきます。モバイルバッテリーはUSB(5V)で電気を送るため、家庭用コンセントにつなぐタイプの扇風機は動かせません。この行と40Wの列が交わるところは電力量だけを並べた参考値と考えてください。コンセント式の扇風機を回したいならばAC出力のあるポータブル電源が必要になります。

第1に一晩(8時間)を乗り切れるかどうかの分かれ目は、消費電力そのものより風量の選び方にあります。500Whのポータブル電源でも、AC扇風機を強風で回せば10時間で尽きます。同じ電源でDCモーターの弱運転なら、桁が変わります。

第2にモバイルバッテリー1個を電源にするなら、風量を弱に絞れば一晩を越えられます。ただし中風量に上げた時点で4時間ほどしか持ちません。強風で使いたいならば初めから容量の大きい電源を選んでおく必要があります。

第3として長時間側の数字はあくまで計算上の値です。待機電力や自己放電、猛暑の中でのバッテリー効率の低下があるため、実際はこれより短くなると考えておいてください。

ポータブル電源の容量帯ごとの選び方は、こちらで解説しています。

防災用ポータブル電源のおすすめ6選|停電対策に必要な容量の選び方を容量帯別に解説
防災用ポータブル電源のおすすめ6選を容量帯別に解説します。小・中・大の容量帯で動かせる家電の目安を整理し、長期保管に強いリン酸鉄リチウム搭載モデルを掲載。ソーラー充電やUPS機能など防災のポイントもまとめました。

失敗しない選び方3軸

稼働時間の見積もり方が分かったところで実際に選ぶときに見る場所を3つに絞ってみます。

① 羽根径と風量段数

羽根径が大きいほどゆっくり回しても風量を稼げます。同じ涼しさを小さな羽根で出そうとすれば回転数を上げることになり、そのぶん電気を食います。停電時の稼働時間を優先するなら、羽根が大きくかつ低速側の段数が細かい機種が有利です。

ここで効いてくるのがDCモーターです。先述のとおりDCモーターは最小風量での消費電力がACモーターと桁違いに小さくなります。風量段数が3段しかない機種だと「弱でも強すぎる」状況が起きるため、段数の多さも確かめておきたいところです。

風量段数を見ずに買うと最も弱い風が体感より強く、結局バッテリーを早く使い切ることになる場合もあります。

② バッテリー容量と充電手段

内蔵バッテリー機なら、容量がmAhとWhのどちらで書かれているかを確認します。mAh表記しかない場合は前章の式でWhに直すと他の電源と比べられます。

見落としやすいのが充電手段です。AC電源だけでなくUSB-Cで充電できる機種なら、モバイルバッテリーやソーラーパネルから電気を分けてもらえます。停電中に充電の道が1本しかない状態は心もとないものです。

ついでに確認しておきたいのが充電しながら使えるか(パススルー給電)です。これができると日中はポータブル電源につないで使い、夜だけ切り離して枕元に持っていくといった運用ができます。

③ 可搬性と防塵・防滴

停電時の扇風機は置き場所が変わります。日中はリビング、夜は寝室、断水の片付け中は玄関先というように移動させる前提で選びましょう。取っ手の有無と重量はカタログに必ず載っています。

屋外やベランダで使うなら防滴性能も見ておきます。避難所や車中泊でも使うつもりなら、倒れにくい形状かどうかも判断材料になります。

防犯くん
防犯くん

やっぱり風が強いやつを選んだほうがいいのかな。

防災さん
防災さん

停電のときは弱い風で長く回せるかどうかが効いてきますよ。風量の段数が細かい機種だと調整しやすいです。

タイプ別おすすめの扇風機

次に実際に選べる機種を4つのタイプに分けて整理します。

① バッテリー内蔵のコードレス扇風機

コンセントにつながず単体で回るという最も手軽なタイプです。普段はリビングや脱衣所で使い、停電時にはそのまま持ち出せます。

選ぶときは連続運転時間の表記に注目してみると多くは一番弱い風量での数字なので、「強で使うなら表記の数分の一」と読み替えておくと見込み違いが起きません。羽根径20cm前後でDCモーター、USB-Cでも充電できる機種が扱いやすい組み合わせです。

② 充電式サーキュレーター

サーキュレーターは直進性の高い風を送る機器です。人に当てて涼むよりも部屋の空気を動かすことに向いています。停電時には窓を開けて外へ熱気を押し出す使い方ができるため、扇風機とは役割が違います。

在宅避難で家の中の空気を回したい方、あるいは水害後の片付けで室内を乾かしたい方は、こちらを選ぶ価値があります。首振り機能の有無とAC・USBの両方で使えるかが選び分けの目印になります。

スイッチボット(SwitchBot)
¥6,980 (2026/09/03 16:35時点 | Amazon調べ)

③ 乾電池も使える卓上ファン(3電源・4電源)

停電が長引くほど強みが出るのが乾電池です。内蔵バッテリー機と違って電池を入れ替えれば何度でも復帰します。コンビニやドラッグストアで買い足せる点は復旧の見通しが立たない状況で効いてきます。

ただし現実には乾電池だけで回る大型の扇風機はほとんど流通していません。
実際に選べるのは卓上サイズで家庭用コンセント・USB・乾電池を切り替えられる3電源や4電源のタイプです。普段はコンセントやUSBで使い、停電したら乾電池に差し替える。この形なら電気が完全に途絶えても枕元や食卓で風を確保できます。

部屋の空気を動かす役割は①や②に任せ、こちらは「最後まで手元で回る1台」として持っておくと役割が分かれます。選ぶときは電池の本数と種類を見ましょう。普段使っている乾電池と種類を揃えておくと備蓄分をまとめて管理できます。連続運転時間はメーカーの公表値で確かめられます。

乾電池の備蓄量については、こちらでまとめています。

乾電池の備蓄は何本必要?人数別の目安と液漏れしない保管
乾電池の防災備蓄は何本必要かをメーカーの目安と当サイトで紹介してきた防災グッズの実例から整理しました。家族人数別の早見表と液漏れさせない保管方法、アルカリと充電池の使い分けもご紹介します。

④ 車中泊・屋外で使う小型機

車中泊やテント、屋外の作業には水濡れや砂ぼこりに強い小型機が向きます。防水仕様でラバーボディの機種なら雨のベランダや水害後の片付けでも気兼ねなく使えます。角度を自由に変えられるスタンド付きなら狭い車内でも風の向きを作れます。

車中泊避難では、車内にこもった空気をどう動かすかが快適さを左右します。USB充電に対応した機種を選んでおけば、車のシガーソケットやUSBポートから電気を継ぎ足せます。エンジンをかけられる状況ならばこの方法がいちばん息の長い電源になります。

車中泊避難の全体像は、こちらの記事で解説しています。

車中泊避難の完全ガイド|場所選び・健康リスク・必需品まで
車中泊避難を安全に乗り越えるための完全ガイドです。安全な場所の選び方、エコノミークラス症候群の対策、夏冬の季節別の備え、必需品リスト、食事・トイレ・睡眠の工夫まで、災害時に車で過ごすための知識をまとめました。

なお屋外の片付けのように動きながら涼みたい場面では、ファンを内蔵した空調服という選択肢もあります。据え置きの扇風機とは向く場面が違うため、こちらで比べてみてください。

空調服は防災に使えるか|ファン付きウェアの仕組みと真夏の片付けで効く選び方
空調服(ファン付きウェア)は防災に使えるのか、災害後の片付けで効く場面と効かない場面を仕組みから解説します。ウェアの形・ファンの風量・バッテリー電圧で選ぶ3つの軸と熱中症を防ぎきれない理由までまとめました。

使うときに気をつけたいこと

充電式の扇風機はリチウムイオン電池を積んでいます。夏に使う機器である以上、暑さとの相性には注意が必要です。

製品評価技術基盤機構(NITE)は2026年7月、リチウムイオン電池搭載製品の事故について注意を呼びかけました。2021年から2025年までの5年間に通知された事故は2,140件あり、製品別ではモバイルバッテリーが最も多く、件数は春から夏にかけて増えて8月にピークを迎えるとしています。対策としては「高温となる場所では使用・保管しない」「強い衝撃や圧力を加えない」「異常を感じた場合は使用を中止する」ことが挙げられています。

出典:NITE『夏バテ(夏のバッテリー)』にご注意を(令和8年7月15日)

停電中は特に充電した扇風機やモバイルバッテリーを車内に置いたままにしがちです。真夏の車内は短時間で高温になるため、避難用の荷物として車に積みっぱなしにするのは避けるのが無難です。

リチウム電池の扱いについては、こちらでまとめています。

リチウム電池の発火対策|モバイルバッテリーの選び方・使い方・廃棄
リチウム電池(モバイルバッテリー・ポータブル電源)の発火対策を「選び方・使い方・廃棄」の3軸でNITEの事故データに基づいて解説します。PSEマーク選びと7つのNG使い方、廃棄3パターンまでまとめました。

また閉め切った部屋で送風だけを続けても残念ながら室温は下がりません。外気のほうが涼しい時間帯には窓を開けて風の通り道をつくり、扇風機を窓に向けて熱気を押し出す使い方が効いてきます。体調に異変を感じたときは風を当てることより涼しい場所へ移ることを優先してください。

あわせて読みたい

扇風機以外の暑さ対策や、停電に備える備蓄については次の記事もご覧ください。

停電時の熱中症対策グッズ|電気不要〜ポータブル電源まで価格帯別にまとめ
真夏の停電に備える熱中症対策グッズを価格帯3段階(電気不要/USB・電池式/ポータブル電源連携)で揃える方法を紹介。冷感タオル・ネッククーラー・USB扇風機から大型ポータブル電源まで救急要請の目安もまとめました。
【夏の停電に備える】窓の遮熱・日よけ対策5選|賃貸OKから本格派まで
夏の停電で室温が上がる不安はありませんか。窓からの熱流入は約7割とされ、サンシェード・すだれ・遮熱フィルム・遮熱ネット・グリーンカーテンで室温上昇を抑えられます。賃貸OKから本格派まで5手法を比較しました。
在宅避難の備蓄リスト|最低3日・推奨1週間分に何をどれだけ備えるか
在宅避難の備蓄リストをカテゴリ別チェックリストでご紹介します。最低3日・推奨1週間分を目安に、水・食料・簡易トイレ・明かり・電源など何をどれだけ備えるかを整理しローリングストックのやり方もあわせて解説します。

まとめ

停電で使える扇風機の選び方について、最後に振り返っておきましょう。

  • 停電中に風を送る手段は、内蔵バッテリー・ポータブル電源・乾電池・シガーソケットの4つに分かれます
  • 稼働時間は「容量(Wh) ÷ 消費電力(W) × 0.8」で見積もれます。mAh表記は「mAh ÷ 1000 × 電圧(V)」でWhに直せます
  • 消費電力は機種より風量で変わります。DCモーターの弱運転なら1〜2W、ACモーターの扇風機なら40W前後が目安です
  • 長引く停電に強いのは乾電池も使えるタイプです。電池を買い足すだけで何度でも復帰できます
  • 扇風機は室温を下げる機器ではありません。水分補給や体を冷やすグッズと組み合わせて使いましょう

夏の停電は、いつ起きても不思議のないところまで来ています。お手元の扇風機が何時間回るのかを一度計算したうえで足りない分を備えてみてはいかがでしょうか。