妊娠中に大きな災害が起きたら——と、考えてみたことはありますか。
つわりや体調の変化、出産準備で頭がいっぱいの時期に防災まで手が回らないのは自然なことです。けれど妊娠中はいざというときに動きにくく避難にも時間がかかります。守る命がふたつあるからこそちょっとした備えが大きな安心につながります。この記事では妊娠中の防災で気をつけたいこと、妊娠中ならではの備え、あると安心なマタニティ防災グッズ、そして避難の注意点と産後への橋渡しまでをご紹介します。
なお体調や持病に関わることはかかりつけの医師・助産師にご相談ください。
妊娠中の防災で気をつけたいこと
妊娠中の体はふだんとは違う状態にありますので、防災の面で以下のような点に注意が必要です。
- 動きにくく、避難に時間がかかる:おなかが大きくなるとすばやく動いたり、しゃがんだり、走ったりが難しくなります。階段や段差、人混みでの将棋倒しなどもふだん以上に危険です
- 転倒しやすい:重心が前に移り足元が見えにくくなるため、転びやすくなります。避難経路の障害物や濡れた床に注意が要ります
- 脱水・冷え・ストレスに弱い:避難生活では水分が不足しがちで長時間同じ姿勢でいると体に負担がかかります。冷えやストレスも体調に響きやすい時期です
- トイレが近い:避難所のトイレ事情は厳しいことが多く妊娠中は我慢がつらいもの。携帯トイレや配慮を早めに考えておきたいところです
そして大切なのは、**妊産婦は災害時に特別な支援が必要な「要配慮者」**だということです。多くの自治体が妊産婦・乳幼児を要配慮者と位置づけ優先的な支援の対象としています。「自分でなんとかしなければ」と抱え込まず、支援を受けてよい立場なのだと知っておいてください。
もうひとつ、妊娠中ならではの事情として里帰り出産があります。出産前後に実家へ移ると生活の拠点が一時的に変わり、避難場所もハザードマップも普段とは別の地域になります。里帰り先の避難所やその地域で受け入れてくれる産院を事前に調べておくと、慣れない土地でも落ち着いて動けます。
妊娠中ならではの備え
一般的な防災グッズに加えて妊娠中だからこそ備えておきたいものがあります。
- 母子健康手帳と健診情報を防水で:厚生労働省研究班監修「ヘルスケアラボ」でも、母子健康手帳は天災で電子カルテが使えなくなったときにも役立つとされています。避難先で初めて受診する医師にも妊娠週数・検査結果・飲んでいる薬・アレルギーが一目で伝わるからです。手帳は防水ケースに入れ健診結果や保険証・診察券のコピーも一緒にしておくと安心です
- かかりつけ産院と緊急連絡先を控える:かかりつけの産院、夜間・休日の連絡先、里帰り予定ならその地域の産院もスマホと紙の両方に控えておきます。停電でスマホが使えないときに紙が生きます
- 普段の薬・サプリを少し多めに:医師から処方されている薬や葉酸・鉄などのサプリを切らさないよう少し多めにストックがおすすめです。中身や量は自己判断せずにかかりつけ医に相談しておきましょう
- 消化に良い非常食と水分:つわりや体調によって食べられるものが変わります。無理なく口にできるもの、こまめにとれる水分を多めに用意しておくと安心です
- 清潔ケア用品:おりものシートや生理用品、体を拭くシート、マスクなど、清潔を保つ用品も忘れずに

防災リュックって家にある普通のもので足りるんじゃないの?

基本の備えは同じでいいんです。でも妊娠中は、そこに「母子健康手帳とかかりつけ産院の情報」を忘れず足してください。避難先で診てもらうとき、手帳がカルテ代わりになってお医者さんに状態が正確に伝わります。これは妊娠中にしかないとても大事な備えなんですよ。
あると安心なマタニティ防災グッズ
備えを形にするうえで役立つグッズと自分でそろえておきたい防災ポーチをご紹介します。出産準備のついでに少しずつそろえておくと無理なく備えられます。
① 防水の母子手帳ケース|いちばん大事な情報を守る
母子健康手帳・診察券・保険証・お薬手帳をまとめて入れられるケースです。水濡れに強いタイプを選べば避難や雨の中でも大切な記録を守れます。ふだんの通院でも使え外出時にいつも持ち歩く習慣がそのまま防災になります。妊婦であることを周囲に知ってもらう意味でも常に携帯しておきたいものです。
② マタニティ対応の防災ポーチ|妊娠中の中身は「自分で詰める」
妊婦さんにちょうどよい中身がそろった既製の防災ポーチは実はあまり多くありません。そこでおすすめなのが市販の小さなポーチに妊娠中ならではの中身を自分で詰める方法です。おりものシート・常備薬・飴やビスケットなどの軽食・携帯トイレ・マスクなどを入れ、通勤や外出のバッグにしのばせておくと外出先で被災して帰宅できないときの最低限の備えになります。両手が空くよう持ち出しは肩掛けやリュックにまとめておきましょう。詰めるものに迷ったら女性向けの防災ポーチの作り方も参考になります。

③ 妊婦をいたわる備え|冷え・むくみ・休息に
避難生活では、体を冷やさない羽織りものやむくみをやわらげる着圧ソックス、腰やおなかを支える携帯クッションなどがあると長時間の待機や慣れない環境での負担を軽くできます。ふだんのマタニティライフでも使えるものを選ぶと無駄になりません。
避難するときの注意と産後への橋渡し
実際に避難が必要になったときは妊娠中であることを最優先に考えて行動します。
- 早めに、無理せず避難する:動きに時間がかかるぶん「まだ大丈夫」ではなく早めの避難が基本です。警戒レベルが上がる前の明るいうちに動けると安全です
- 段差・人混み・将棋倒しを避ける:避難経路はできるだけ平坦で人の流れが落ち着いたルートを取りましょう。両手が空くリュックで足元を確かめながら進みます
- 避難所で「妊娠中です」と伝える:避難所の運営者に妊娠中であることを申し出て配慮を求めましょう。マタニティマークを身につけておくと声に出さなくても伝わります。妊産婦・乳幼児用のスペースが設けられることもあります
- 周囲のサポートを頼る:家族やパートナーと「災害時はどこに避難するか」「連絡が取れないときはどうするか」を平時に話し合っておきましょう。上のお子さんがいる場合は自分が思うように動けないぶん、誰がどの子の手を引くか・抱っこするかを具体的に決めておくと安心です。おなかが大きいと小さな子を抱き上げるのも負担になるため、抱っこ紐やベビーカーに頼れる状況かも考えておきたいところです
- 体調の急変は迷わず連絡を:おなかの張り、出血、破水、強い腹痛などがあれば、災害時でもためらわずかかりつけ産院や救急(119番)に連絡してください。電話がつながりにくいときは、避難所の救護担当や近くの人に「妊娠中で体調が悪い」と早めに伝えること。陣痛と災害が重なるという最も不安な状況こそ一人で抱え込まず周囲を頼る場面です。判断に迷うときもまずは相談を第一に考えましょう
そして無事に出産を迎えたあとは赤ちゃんとの生活に合わせた備えへと切り替えていきます。液体ミルクや赤ちゃんの暑さ対策、成長後の子どもの防災はこちらの記事もあわせてどうぞ。




避難所で「妊娠中なので」って言うのはなんだか申し訳なくて言い出しにくい気がしちゃうかも。

遠慮はいりませんよ。妊産婦は「要配慮者」として支援を受けてよい立場なんです。むしろ伝えてもらえたほうが運営側も配慮しやすくなります。マタニティマークを見えるところに付けておくだけでも周りが気づいて手を貸しやすくなりますよ。
まとめ
妊婦の防災について、妊娠中の備えと避難の注意点をご紹介しました。最後に要点を振り返ります。
- 妊娠中のリスク:動きにくい・転びやすい・脱水/冷え/ストレスに弱い・トイレが近い。妊産婦は「要配慮者」
- 妊娠中ならではの備え:母子健康手帳と健診情報を防水で(カルテ代わり)/かかりつけ産院の連絡先を紙でも/薬・サプリを少し多めに/消化に良い非常食
- グッズと備え:防水の母子手帳ケース/妊娠中の中身を自分で詰めた防災ポーチ/冷え・むくみ・休息をいたわる備え
- 避難:早めに・無理せず/段差や人混みを避ける/避難所で妊娠中と伝える(マタニティマーク)/家族と段取りを共有/体調急変は迷わず連絡
- 産後へ:出産後は赤ちゃん・液体ミルク・子どもの備えへ切り替える
体調に関わる判断はかかりつけ医・助産師に相談しながら、まずは母子健康手帳を防水ケースに入れて毎日持ち歩くところからできる備えを少しずつ始めてみてはいかがでしょうか。出産までの大切な時間を安心して過ごすための一歩になるはずです。


