自分の県の南海トラフ津波想定は各メディアで定期的に発信されていますがご存じですか?
「うちは内陸だから関係ない」「うちの県は最大3mって聞いた」―そう思っていても実は 同じ県内でも市町村によって大きく違う ことがあります。
この記事では、南海トラフ津波の関係 22都府県の早見表 を整理し 「県平均では分からない」5つのリスク と 注目県5つの深掘り で「数値の見方」を解説します。最後に沿岸住民の装備2点もまとめました。
南海トラフ津波 関係22都府県の概要
南海トラフ地震は駿河湾から日向灘にかけてのプレート境界で発生が想定される巨大地震です。津波の影響を受ける可能性がある地域として内閣府は関係22都府県 を指定しているとされています。
22都府県の内訳
- 太平洋側(津波影響大):千葉・神奈川・静岡・愛知・三重・和歌山・徳島・愛媛・高知・大分・宮崎・鹿児島
- 太平洋側(津波影響中):茨城・東京・大阪・兵庫・香川
- 瀬戸内・日本海・内陸(津波影響小):京都・岡山・広島・山口・福岡
想定値は2012年初公表→2025年見直し
南海トラフ巨大地震の被害想定は、内閣府の「南海トラフの巨大地震モデル検討会」が 2012年に初公表 し2025年3月に見直し版 が公表されたとされています。本記事の早見表はこれらの 最大ケースの想定 をもとに「高さの目安」を段階バンドで整理したものです(精密な確定値は各県公式・ハザードマップでご確認ください)。
詳しくは 内閣府「南海トラフ巨大地震対策」 で確認できます。
なお、南海トラフ地震臨時情報(「巨大地震警戒」「巨大地震注意」)の家庭での対応方法は関連記事もあわせてご参考ください。

都道府県別の「高さの目安」早見表(段階バンド)
南海トラフ巨大地震(最大クラス)の津波想定は、内閣府が 2012年に初公表 し2025年3月に見直し版 を公表したとされています。ただし数値は 同じ県でも市町村ごとに大きく異なる ため、ここでは精密な単一の数値を並べるのではなく最大津波高の「目安(最大ケース)」を段階バンドで整理 します。
最大津波高の目安(段階バンド)
| 目安(最大ケース) | 主な該当都府県 |
|---|---|
| 30m超 | 高知・静岡(+東京都の伊豆諸島〔島嶼部〕で約31mとされる) |
| おおむね10〜30m | 三重・徳島・愛媛・和歌山・愛知・宮崎・大分・千葉・神奈川・鹿児島 |
| おおむね3〜10m | 茨城・大阪・兵庫・香川・岡山・広島・山口 |
| おおむね3m程度まで | 東京(東京湾内)・京都・福岡 |
10m超の津波が想定される地域は 13都県 とされています(2025年見直し)。バンドはあくまで 最大ケースの目安 で同じ県内でも湾の形や市町村によって数値は大きく変わります。
到達時間が極端に短い地域(数分で到達とされる)
津波対策では高さ以上に「何分で来るか」が避難の生死を分けます。次の地域では地震発生から数分で津波が到達する想定とされています。
- 静岡県(伊豆半島南端):最短 約2分
- 高知県:最短 約3分
- 三重県・徳島県の沿岸(牟岐町など):最短 約3〜4分
到達が 4分以内 とされる地域では「揺れたら即避難」が文字どおり命に直結します。
表の見方
- 数値は最大ケース(最も大きく見積もったシナリオ)の目安:実際の数値はシナリオや市町村で変わるとされています
- 県の最大値=特定の市町村の数値:県全体が同じ高さになるわけではありません(詳細は次章)
- 2012年想定→2025年見直しで数値が更新:最新の確定値は 各県公式・国交省「重ねるハザードマップ」 で確認することが推奨されています
「県平均では分からない」5つのリスク
早見表だけを見ると自分の県のリスクが分かったような気になりがちですが、「県平均では見えてこない」リスク が5つあります。

高知県は最大34mってあるけど高知県のどこにいても34mの津波が来るってこと?

いいえ、その34mは黒潮町など特定の市町村の数字なんです。同じ県でも場所によって大きく変わるとされているので自分の市区町村のハザードマップで確かめるのが大切ですよ。
リスク① 県最大値は特定の市町村に集中
「高知県34m」「静岡県33m」 という最大値は実は 県全体の話ではなく特定の市町村 の数値です。
- 高知県34m = 黒潮町・土佐清水市
- 静岡県33m = 下田市・南伊豆町
- 同じ高知県内でも、高知市の沿岸部は4〜10m台 にとどまる地点もあるとされる
「自分の県は34mで危ない」ではなく、「自分の市区町村は何mか」 を確認することが大切です。
リスク② 湾の形で大きく違う
V字型湾・リアス式海岸 は津波を増幅しやすく同じ県内でも湾の形で数値が大きく変わります。
- 湾の奥は 波の収束で2〜3倍 に増幅されるとされる
- リアス式海岸(三重・愛媛・宮崎の一部)は要注意
- 平らな海岸線でも 狭い入り江 は局所的に高くなる
リスク③ 「最大津波高」と「浸水深」は別物

最大津波高34mってうちも34mの高さまで水につかっちゃうの?

それは海面から測った波の高さなんです。家の床から測る「浸水深」とは別の数字なのでハザードマップでは浸水深のほうを見ると分かりやすいですよ。
早見表の「最大津波高」は 海面からの遡上高(陸地のどこまで波が登るか)です。
- 最大津波高:海面から測った波の高さ
- 浸水深:平地での水位(自分の家の床から測った高さ)
- ハザードマップで使われるのは多くの場合 「浸水深」
「最大津波高34m」と「うちの家の浸水深3m」は 別の数値 として読む必要があります。
リスク④ 夜間・冬場の発生は条件が厳しい
数値は 「日中・晴天・気温20度」想定 で計算されている場合が多いとされています。
- 夜間:視界が悪く避難所到達まで時間がかかる
- 冬場:低体温症リスクで避難先での生存率が下がる
- 降雨:道路冠水で経路が制限される
- 休日:通勤・通学経路と異なる場所にいる可能性
リスク⑤ 3シナリオで数値が変動する
南海トラフ巨大地震の想定は3つのシナリオ で計算されています。
- 半割れ(M9クラス):南海トラフ全域が一度に動くケース
- 一部割れ(M8前半):南海トラフの東側 or 西側だけが動くケース
- ゆっくりすべり:地震計に出にくいゆっくりとした動きが先行するケース
早見表の数値は 最大ケース ですがシナリオによって数値の幅が変わるとされています。
注目県5つを深掘り
最大津波高が大きい5県について市町村レベルの違いを深掘りします。各県の特徴を知ることで、自分の地域の備えのヒントになります。
① 高知県(最大約34m・最短約3分)
- 黒潮町:約34m(全国最大とされる)
- 土佐清水市:約30m前後
- 須崎市・宿毛市:約20m超
- 高知市:4〜10m台にとどまる地点もあるとされる
太平洋に直接面したV字型の地形が津波の増幅要因になっているとされています。黒潮町は防災教育・避難タワー整備・住民訓練に積極的に取り組んでいるとされる自治体としても知られます。
② 静岡県(最大約33m・最短約2分)
- 下田市・南伊豆町:約33m
- 伊豆半島南端:到達時間 約2分 の地点も
- 静岡市・浜松市:10〜15m前後
最短到達時間が約2分 という地点があることが大きな特徴です。「揺れたら即避難」が文字通り命に直結する数値です。
③ 三重県(最大約27m・最短約4分)
- 尾鷲市・南伊勢町:約27m
- 熊野市・志摩市:約20m前後
- 津市・四日市市:10m台
熊野灘沿岸は リアス式海岸の増幅 が想定されています。湾の奥ほど高くなりやすい傾向があるとされています。
④ 宮崎県(最大約17m・最短約14分)
- 日南市・串間市:約17m
- 宮崎市:10m前後
- 延岡市・日向市:8〜13m
2024年8月に「巨大地震注意」発表のきっかけとなった日向灘M7.1地震の震源地に近い地域です。沿岸住民の備えへの意識が改めて高まったとされています。
⑤ 徳島県(最大約24m・最短約4分)
- 美波町・牟岐町:約24m
- 海陽町:約20m
- 徳島市:3〜5m
太平洋に面した湾構造で増幅されるとされています。美波町は 防災教育の先進地域 としても知られているとされる自治体です。
「最大値が出る市町村」は全国に分散
5県以外でも和歌山県串本町(約20m)・愛媛県愛南町(約21m)・東京都の伊豆諸島〔島嶼部〕(約31mとされる) など、特定の市町村・地点に最大値が集中する傾向があります。
なお千葉県は県全体の最大でもおおむね10m前後とされており館山市など沿岸の市町村が「南海トラフ地震防災対策推進地域」に指定されています。「県の最大値」ではなく「自分の市区町村のハザードマップ」で確認することが推奨されているとされています。
数値の見方の注意点
南海トラフ津波の数値を読むときの 3つの注意点 を整理します。
注意点① 3シナリオの想定が併存する
南海トラフ巨大地震の想定は複数のシナリオ で計算されています。
| シナリオ | 想定M | 特徴 |
|---|---|---|
| 半割れ | 約M9.0 | 南海トラフ全域が一度に動く・最大ケース |
| 一部割れ | 約M8.0前半 | 南海トラフの東側 or 西側だけが動く |
| ゆっくりすべり | – | 地震計に出にくいゆっくりとした動きが先行 |
早見表の数値は 半割れシナリオ(最大ケース) をベースにしていますが実際の地震がどのシナリオで起きるかは想定段階では分からないとされています。
注意点② 「想定の倍」を目安にする考え方
東日本大震災(2011年)では、気象庁の初動警報が 「予想3m」 だったのに対し、実際は 遡上高40m超 という想定外の津波が発生しました。
この教訓から 「想定値の倍を目安に避難する」 という考え方が広く共有されつつあるとされています。
- 想定10m → 標高20m以上へ
- 想定5m → 標高10m以上へ
津波警報の3段階と避難判断の関連は関連記事もあわせてご参考ください。

注意点③ 2012年想定→2025年見直しで数値が更新
南海トラフ巨大地震の被害想定は2025年3月に見直し版 が公表されたとされています。一部の県・市町村で数値が更新されているため、最新情報は内閣府ホームページや自治体ハザードマップで確認することが推奨されています。
早見表を防災行動につなげる3ステップ
早見表を眺めるだけで終わらせず3ステップで防災行動につなげる 流れをご紹介します。
ステップ① 自分の市区町村のハザードマップを確認
県の早見表で大まかなリスクを把握したら、次は 自分の市区町村のハザードマップ で詳細を確認します。
- 国交省「重ねるハザードマップ」:https://disaportal.gsi.go.jp/hazardmap/maps/index.html?layerset=tsunami
- 自治体ホームページ:「〇〇市 ハザードマップ」で検索
- 自宅・職場・学校・実家の所在地を確認
ハザードマップと警戒レベルの読み方は関連記事もあわせてご参考ください。

ステップ② 避難場所と経路を3つ決める
- 第一避難場所:徒歩 5分以内 の高台 or 津波避難ビル
- 第二避難場所:徒歩 10分以内 のさらに高い場所
- 第三避難場所:宿泊可能な遠方(親戚宅など)
到達時間が 約2〜4分 の県(静岡・高知・三重・徳島の一部)では 「揺れた瞬間に走り出す」 ことができる距離・経路の準備が大切です。
ステップ③ 家族で「てんでんこ」を共有
「揺れたら家族を待たず各自が高台へ即避難」という 三陸地方の戒め「てんでんこ」 を家庭で合意しておきます。
- 子どもに「お父さん・お母さんを待たないで逃げて」と伝える
- 集合場所を 平時に決めておく
- 安否確認方法(災害用伝言ダイヤル171・LINEグループ)を再合意
津波てんでんこの背景と実例は関連記事もあわせてご参考ください。

沿岸住民が揃えたい装備2点
南海トラフ津波の想定地域(特に到達時間 4分以内 の市町村)に住んでいる家庭で揃えておきたい装備を2点に絞ってご紹介します。
① 子ども用ライフジャケット
沿岸住民の 「子どもの命を守る最後の保険」 がライフジャケットです。津波で流された場合でも浮き続ける助けになります。
- 子どもの体型にフィットする小型サイズ
- 首までしっかり浮かせる固定式タイプ
- 目立つ色(オレンジ・蛍光色) で発見されやすく
- 玄関・寝室・車内に常備
子ども用ライフジャケットの選び方は関連記事もあわせてご参考ください。

② 防災ホイッスル
津波避難後・避難所への移動中・倒壊家屋からの救助要請に 大きな音で居場所を知らせる ための装備です。声を出し続けるより消費体力が少なく長時間使えます。
- 音量100dB以上 で遠くまで届く
- 湿気・水濡れに強い樹脂製
- 首から下げられるストラップ付き
- 複数個用意して家族全員に
まとめ
南海トラフ津波 県別早見表の要点を整理しました。
- 関係22都府県:太平洋側を中心に幅広く影響想定
- 最大値の代表:高知34m・静岡33m・三重27m・徳島24m・愛媛21m(東京都の島嶼部で約31mとされる)
- 最短到達時間:静岡約2分・高知約3分・三重/徳島約4分
- 「県平均では分からない」5つのリスク:最大値は特定市町村/湾の形/最大高と浸水深の違い/夜間・冬場/3シナリオ
- 数値の見方:3シナリオ併存/想定の倍を目安/2025年見直し
- 行動3ステップ:ハザードマップ確認→避難場所3つ決定→てんでんこ共有
- 装備:子ども用ライフジャケット+防災ホイッスル
「自分の県の最大値」ではなく 「自分の市区町村のハザードマップ」 で確認することが第一歩です。ぜひ家族で確認してみてはいかがでしょうか。


