ご家庭に消火器を備えていますか。火災報知器は設置義務があるので付けている方が多い一方、消火器までは用意していないというご家庭は少なくないかもしれません。けれども火が出てすぐの「初期消火」ができるかどうかは被害の大きさを左右する重要なポイントだとされています。
消防庁の統計によると、住宅火災は建物火災の半数以上を占めており毎年多くの死傷者が出ています。火が小さいうちに消し止められれば大きな被害を防げる可能性が高まります。その初期消火の頼れる味方が家庭用の消火器です。
とはいえ、いざ買おうとすると「住宅用と業務用は何が違うの」「粉末と液体、どっちがいいの」「どこに置けばいいの」とわからないことが次々と出てきます。 この記事では、家庭用消火器のおすすめの選び方を種類の違いから設置場所、使用期限の管理まで順を追って解説していきます。
家庭にこそ消火器が必要な理由
なぜ家庭に消火器を備えておくとよいのか、その背景を整理しておきましょう。
住宅火災は建物火災の半数以上
消防庁の集計では建物火災のうち過半数を住宅火災が占めているとされています。火災は決して特別な場所で起きるものではなく私たちの暮らしのすぐそばにあるリスクです。
特に住宅火災では高齢者が亡くなるケースが多く、逃げ遅れが大きな要因のひとつとされています。火が小さいうちに消し止める「初期消火」の手段を備えておくことは命を守る備えにもつながります。
初期消火は「火が小さいうち」が勝負
消火器が役立つのは あくまで火が小さいうちです。一般的に炎が天井に届くほど大きくなったら無理に消そうとせず避難を優先すべきとされています。
だからこそ火元の近くにすぐ手に取れる消火器があるかどうかが大切になります。台所で小さな火が上がったとき、数歩のところに消火器があれば落ち着いて対処できる可能性が高まります。火災への備えは煙をいち早く知らせる住宅用火災警報器の交換時期とあわせて考えておくと安心です。
近年は、モバイルバッテリーなどに使われるリチウムイオン電池の発火による火災も注目されています。出火そのものを防ぐ備えとあわせて確認しておくと安心です。


「消火器は『火を消す道具』であると同時に『逃げる時間をつくる道具』でもあります。無理は禁物ですが、初期消火の一手があるだけで その後の行動に余裕が生まれますよ。」
住宅用消火器と業務用消火器の違い
家庭用に消火器を選ぶとき知っておきたいのが「住宅用」と「業務用」の違いです。見た目は似ていても想定された使い方が異なります。
家庭には住宅用消火器が向いている
日本消火器工業会は家庭への設置には住宅用消火器をおすすめしています。住宅用消火器は、一般家庭で使いやすいように設計されており、本体が比較的軽量で扱いやすいのが特徴です。
一方の業務用消火器は、消防法で設置が義務づけられた施設などに置かれるもので消火能力は高いものの本体が重く、家庭での取り回しはやや大変です。ご家庭に業務用を置くこと自体は問題ないとされていますが、まずは住宅用から検討するのが扱いやすい選択と言えます。
出典:一般社団法人日本消火器工業会「業務用消火器と住宅用消火器の買い間違いにご注意ください」
詰め替えできず、使用期限で交換する
住宅用消火器は、薬剤の詰め替えができない構造になっており使用期限が来たら本体ごと交換します。点検の義務はありませんが使用期限の管理は自分で意識しておく必要があります。
適応火災はマークで見分ける
住宅用と業務用は本体に表示された適応火災のマークで見分けられるとされています。購入の際は、本体の表示を見て家庭用として適したものかを確認しておくとよいでしょう。
消火器の種類と選び方
ひとくちに消火器といっても中身の薬剤によっていくつかの種類があります。それぞれの得意分野を知っておくと、わが家に合った1本を選びやすくなります。
粉末タイプ
もっとも広く使われているのが粉末(ABC粉末)タイプです。一般的な木材や紙の火災、油の火災、電気火災のいずれにも対応できるとされ火を素早く抑える力があります。 「ABC」とは、紙や木などの普通火災(A)・油火災(B)・電気火災(C)の3種類に対応することを表しており、家庭で起こりうる多くの火災をこれ1本でカバーできるのが強みです。
価格も手ごろなものが多く1本そろえるなら扱いやすい選択肢です。ただし放射すると粉末が広範囲に飛び散るため、後片付けに手間がかかるという面もあります。
まず1本備えるなら軽量で扱いやすい住宅用の粉末ABC消火器が定番です。
強化液(中性)タイプ
近年、家庭用として人気が高まっているのが強化液タイプです。液体で消火するため、放射しても粉末のように飛散しにくく後始末がしやすいのが利点とされています。
天ぷら油などの火災にも対応する製品が多く台所まわりに置く1本として選ばれやすいタイプです。粉末に比べると価格はやや高めの傾向があります。
後始末のしやすさを重視するならば中性の強化液タイプが台所まわりの1本に向いています。
エアゾール式簡易消火具
厳密には消火器とは別のものですが、スプレー缶のように手軽に使える「エアゾール式簡易消火具」もあります。軽くて扱いやすく台所のコンロ近くにさっと置けるのが魅力です。
ただし消火能力は本格的な消火器ほどではなく、有効期限も3年程度と短めに設定されているとされています。消火器の補助として火元の近くに置いておく使い方が向いています。
コンロのそばにさっと置ける補助の一本としてエアゾール式の簡易消火具も手軽です。

「迷ったら、リビングや玄関に粉末タイプを1本、台所に後始末しやすい強化液タイプかエアゾール式を1本、という組み合わせがバランスよくおすすめです。」
設置場所と置き方のポイント
せっかく消火器を備えても、いざというときにすぐ手が届かなければ意味がありません。置き場所にも少し気を配りましょう。
火元の近く、でも火元の真上は避ける
消火器は火災が起きやすい台所やストーブの近くに置いておくのが基本です。ただし、コンロの真上や火が出たら近づけなくなる場所に置くのは避けます。火元から少し離れた、すぐ手に取れる位置が理想です。
台所・リビング・寝室など各階や各部屋に分けて複数置いておくと、どこで火が出ても対応しやすくなります。目安としては火を最も使う台所に1本、加えて寝室や階段の近くにもう1本というように生活動線に沿って配置すると安心です。
取り出しやすく、倒れにくい場所に
消火器は、いざというとき迷わず手に取れる場所に置くことが大切です。家具の奥にしまい込んでしまうと緊急時に出てこられません。一方で通路の真ん中など、ぶつかって倒れやすい場所も避けたいところです。
地震で倒れたり落下したりしないよう安定した場所に置くか、転倒を防ぐ工夫をしておくと安心です。家具や物の配置の見直しは地震に備えた自宅の対策もあわせてご覧ください。
家族みんなが場所を知っておく
消火器は置いてあること自体を家族全員が知っていなければ意味がありません。設置場所を家族で共有し、できれば使い方も一度確認しておきましょう。
いざというときの使い方を覚えておく
消火器は、使い方を知らないと肝心なときに動かせません。操作は難しくないので備えると同時に基本の流れを頭に入れておきましょう。一般的な消火器は次の3つの動作で使えるとされています。
1. 安全ピンを抜く
本体の上部にある黄色い安全ピンを まっすぐ上に引き抜きます。これを抜かないとレバーが握れない仕組みになっています。
2. ホースを火元に向ける
ホース(ノズル)を外し先端を火元に向けます。このとき、炎の先ではなく燃えているものの根元を狙うのがポイントです。
3. レバーを強く握って放射する
レバーを強く握ると薬剤が放射されます。火元の手前から ほうきで掃くように左右に振りながら根元を消していきます。
火に近づきすぎず、風上に立って逃げ道を背にして使うのが安全とされています。炎が天井に届くほど大きくなった場合は無理をせずすぐに避難してください。

「『ピンを抜く・ホースを向ける・レバーを握る』の3ステップです。住宅用消火器は本体や付属の説明にも使い方が書かれているので買ったときに一度目を通しておくと安心ですよ。」
使用期限の管理と処分方法
消火器は「買って置いておけば安心」ではなく、定期的な確認と期限が来たときの交換が欠かせません。
住宅用は約5年、業務用は約10年が目安
日本消火器工業会によると、消火器の使用期限は住宅用でおおむね5年、業務用でおおむね10年が目安とされています。期限を過ぎた消火器は内部の腐食などにより、まれに破裂事故につながるおそれもあるとされており早めの交換が推奨されています。
ときどき本体の状態を確認する
使用期限内でも本体にサビやへこみ、変形がないか定期的に目視しておくと安心です。圧力計が付いているタイプは針が適正な範囲を指しているかも見ておきましょう。
古い消火器は正しく処分する
不要になった消火器は燃えるごみや粗大ごみとして出すことはできません。日本消火器工業会が地域の販売代理店などと協力してリサイクルの窓口を設けているとされているので、購入店や専門の窓口に相談して処分します。スプレー式の簡易消火具の捨て方は、スプレー缶の捨て方の考え方も参考になります。
まとめ
家庭用消火器のおすすめの選び方について見てきました。最後に要点を振り返ります。
- 住宅火災は建物火災の半数以上を占め、初期消火の備えが命を守ることにつながる
- 家庭には軽量で扱いやすい住宅用消火器が向いている
- 種類は粉末・強化液・エアゾール式簡易消火具があり、置き場所に応じて使い分ける
- 台所やリビングなど火元の近く、すぐ手に取れる場所へ複数置くとよい
- 使用期限は住宅用で約5年が目安。期限切れは交換し古いものはリサイクル窓口で処分する
消火器は火が小さいうちに被害を食い止めるための心強い備えです。火災報知器と併せてご自宅に合った消火器を一本、手の届くところに用意してみてはいかがでしょうか。


