地震のあとに誰もいない家から火が出るとしたら原因は何だと思いますか?
実は大地震のあとの火災では電気に起因するものが多いとされています。その対策として国が普及を進めているのが揺れを感知して電気を自動で止める感震ブレーカーです。 この記事では通電火災の仕組みから、感震ブレーカーのおすすめと3タイプの選び方、見落としがちな設置後の注意点までご紹介します。
通電火災とは|なぜ感震ブレーカーがすすめられるのか
消防庁の消防白書によると、東日本大震災の本震による火災では原因が特定されたもののうち過半数が電気に起因していたとされています。地震の火災というと調理中の火を思い浮かべますが実際に多いのは電気まわりからの出火です。
なかでも注意したいのが 通電火災 です。次のような流れで起こると考えられています。
- 大きな地震で停電し家の電気が止まる
- 住人は避難などで家を離れる(または倒れた電気製品に気づかない)
- 数時間後、停電が復旧した瞬間に電気が流れる
- 倒れた電気ストーブ・家具の下敷きになって傷んだ配線・ヒーターに接触した可燃物などから出火する
怖いのは出火するのが揺れの直後ではなく復旧の瞬間だという点です。家に誰もいなければ気づくことも消すこともできず、避難中の留守宅で火災が起きてしまいます。
基本の対策は「避難するときにブレーカーを落とす」ことですが、緊急時にとっさに分電盤まで行くのは簡単ではなく外出中の地震には対応できません。そこで内閣府の検討会でも設定以上の揺れを感知したときに電気を自動的に止める感震ブレーカーが不在時や避難が難しい場合の電気火災対策として有効とされています。
地震時の家の中の備え全般(家具の固定など)はこちらの記事もあわせてどうぞ。

感震ブレーカーの種類と選び方
感震ブレーカーは大きく3タイプに分かれます。価格も仕組みも異なるためにまず全体像を比較してみましょう。
| タイプ | 仕組み | 工事 | 価格帯の目安 | 守れる範囲 |
|---|---|---|---|---|
| 分電盤タイプ | 分電盤で揺れを感知し全回路を遮断 | 必要(後付け型あり) | 高め | 家全体 |
| コンセントタイプ | 差したコンセントの電気だけ遮断 | 不要(差込式が中心) | 中 | 特定の家電 |
| 簡易タイプ | バネやおもりの力でブレーカーのレバーを落とす | 不要 | 数千円 | 家全体 |
確実性と範囲を重視するなら分電盤タイプ、手軽さなら簡易タイプ、電気ストーブなど火元になりやすい家電だけ守るならコンセントタイプという整理になります。まずは数千円の簡易タイプから始めて、リフォームや建て替えの機会に分電盤タイプを検討するという段階的な進め方も現実的です。
製品を選ぶときは次の2点も確認しておきましょう。
- 作動する揺れの強さ:どの程度の揺れで作動する設定かは製品ごとに異なります。製品の表示を確認しましょう
- 遮断までの猶予:揺れたら即座に切れるタイプと避難用の照明時間を確保するため数分おいて切れるタイプがあります
なお「うちはオール電化ではないから関係ない」「ガスは元栓を閉めるから大丈夫」と思われるかもしれませんが通電火災は電気を使うすべての家庭で起こりえます。ガスと違って電気は復旧時に自動で流れてくるためです。住まいの熱源を問わず備えておきたい対策といえます。

ブレーカーなんて地震のときに自分で落とせばいいんじゃないの?

それが基本ですが、避難で慌てているときに分電盤まで行くのは意外と難しいですし留守中の地震には対応できません。感震ブレーカーは揺れを感知して自動で電気を止めてくれるので人がいなくても備えになるとされていますよ。
感震ブレーカーのおすすめ3タイプ
3タイプそれぞれの代表的な製品像と向いている人を見ていきましょう。
① 簡易タイプ(工事不要・数千円)
分電盤のブレーカーのレバーに取り付け、揺れるとおもりが落ちる力などでレバーを物理的に引き下げて電気を遮断する器具です。電気工事が不要で数千円〜1万円程度と本格的な工事タイプより手軽なため、最初の1個に取り入れやすいタイプです。賃貸住宅でも設置しやすく引っ越し先へ付け替えることもできます。
購入前に自宅の分電盤のブレーカー形状に取り付けられるタイプかを確認しましょう。作動すると家全体の電気が落ちるため、夜間の照明の備えとセットで導入するのがポイントです(後述します)。
② コンセントタイプ(差込式)
コンセントに差し込み、揺れを感知するとその差し込み口の電気だけを遮断するタイプです。電気ストーブ・観賞魚用ヒーター・熱帯魚水槽まわりなど火元になりやすい家電をピンポイントで守るのに向いています。
家全体は守れないため簡易タイプや分電盤タイプと組み合わせると安心が増します。冬だけ電気ストーブの回路に使うなど季節に合わせた運用もしやすいタイプです。
③ 分電盤後付けタイプ(本格派)
分電盤に感震機能を後付けし設定以上の揺れで家全体の回路を遮断するタイプです。遮断までに数分の猶予を設けて夜間でも照明を確保しながら避難できるよう配慮されたモデルもあります。
多くの製品で電気工事が必要になるため、費用と工事条件を確認したうえでリフォームや分電盤交換のタイミングにあわせて検討するとよいでしょう。お使いの分電盤の型式に合う製品かどうかも事前に確認しておくと安心です。
設置のポイントと注意点
感震ブレーカーは付けて終わりではありません。次の点をあわせて備えておきましょう。
- 夜の地震では照明も消える:作動すると照明を含む全電源が落ちます。夜間の地震では足元が真っ暗になるため、停電すると自動で点く保安灯やランタンを寝室・廊下に置くことをセットで考えましょう。内閣府の検討会でも急な停電に備えた照明の準備が留意点として挙げられています
- 在宅医療機器がある家庭は事前に相談:電源の遮断が命に関わる機器を使っている場合は設置の前に主治医や機器メーカー・電力会社に相談しましょう
- 誤作動と復旧手順を理解しておく:大型車の振動などで作動する可能性もあります。作動後にブレーカーを戻す手順を家族で確認しておくと慌てません。復旧の際は倒れた電気製品やコードの損傷がないか確かめてから電気を戻すのが基本です
- 賃貸でも簡易タイプなら:工事不要で原状回復もしやすいため、賃貸住宅の地震火災対策として取り入れやすい選択肢です
- 自治体の補助制度を確認する:感震ブレーカーの購入や設置に補助を出している自治体があります。内閣府が支援制度の一覧を公表しているので購入前にお住まいの自治体の制度を確認してみましょう
そして大切なのは感震ブレーカーを多層防御のひとつとして位置づけることです。これだけで地震後の火災をすべて防げるわけではありません。火災を「出さない」感震ブレーカー、「早く気づく」住宅用火災警報器、「初期に消す」消火器、それに避難時の手動でのブレーカー遮断。これらを組み合わせてはじめて地震後の火のリスクを小さくできます。
電気が原因の火災という点では、近年増えているリチウムイオン電池の発火にも注意したいところです。正しい扱い方や保管のポイントはこちらでまとめています。


作動したら家中の電気が消えるんだよね。夜に地震が来たら真っ暗で動けなくない?

そこが大事な注意点です。感震ブレーカーを付けるなら停電すると自動で点くライトやランタンを寝室や廊下にセットで備えるのがおすすめとされています。明かりの備えとセットにしておくことで初めて安心して使えますよ。
夜間照明の選び方と火災に早く気づくための警報器はこちらの記事でまとめています。


まとめ
感震ブレーカーのおすすめと選び方、設置の注意点をご紹介しました。最後に要点を振り返ります。
- 通電火災は復旧の瞬間に起きる:東日本大震災の本震火災は原因特定分の過半数が電気起因とされる。無人の家でも出火する
- 3タイプから選ぶ:分電盤タイプ(全体・本格)/コンセントタイプ(特定家電)/簡易タイプ(手軽・工事不要)
- まずは簡易タイプから:賃貸でも設置しやすく段階的に分電盤タイプへ
- 照明とセットで:作動後は夜真っ暗になるため保安灯・ランタンを寝室と廊下に
- 多層防御で:警報器・消火器・手動遮断と組み合わせる。医療機器がある家庭は事前に相談
まずは数千円の簡易タイプとランタンのセットから地震後の火災への備えを始めてみてはいかがでしょうか。


