近くの家族が炎天下で急にぐったりしたら、落ち着いて動けそうですか?
総務省消防庁の発表によると、2026年6月22日から6月28日までの1週間で熱中症により救急搬送された人は全国で515人にのぼったとされています。
熱中症は放置すると命に関わることもある一方で最初の応急処置が回復を大きく左右するとされています。
この記事では、熱中症を疑う症状の見分け方からその場でできる応急処置の手順、水分を飲ませてはいけないケースから救急車を呼ぶかどうかの判断までを環境省のマニュアルをもとに整理しました。
熱中症を疑う症状と重症度の見分け方
症状で見る3段階の重症度
環境省の熱中症環境保健マニュアルでは、症状の重さに応じて熱中症をⅠ度からⅢ度までの3段階に分類しています。まずは自分や周りの人がどの段階に当てはまるか、次の表で確認してみましょうか。
| 重症度 | 主な症状 | 対処の目安 |
|---|---|---|
| Ⅰ度(軽症) | めまい・失神・筋肉痛・筋肉の硬直(こむら返り)・大量の発汗 | その場で応急処置し様子を見る |
| Ⅱ度(中等症) | 頭痛・不快感・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感 | 水分がとれない・よくならないなら医療機関へ |
| Ⅲ度(重症) | 意識障害・けいれん・手足の運動障害・高体温 | ためらわず救急車 |
Ⅰ度は現場での応急処置をしながら様子を見られる段階、Ⅱ度は自力での水分補給が難しかったり処置をしても改善しなかったりする場合に医療機関への受診を検討する段階、Ⅲ度は意識障害などがみられ救急車の要請をためらわない段階とされています。以下の応急処置の手順は、主にⅠ度とⅡ度を想定したものを記載します。

めまいくらいなら、少し休めば大丈夫だよね?

軽く見えても症状は急に進むことがあるとされています。まず様子を確認してみて体調が良くならなければ医療機関へ向かってくださいね。
2024年に最重症の『Ⅳ度』が加わりました
2024年7月には日本救急医学会の熱中症診療ガイドラインが改訂され、従来のⅠ度からⅢ度に加え、最重症にあたるⅣ度が新たに設けられたとされています。分類の詳細を覚えるよりも「呼びかけへの反応がおかしければ救急車」を現場での基本として意識しておくほうが良さそうです。
高齢者は暑さや喉の渇きを感じにくいといわれ、気づいたときには症状が進んでいることもあります。室内での熱中症対策はこちらの記事でも紹介しています。

その場でやる応急処置の手順
熱中症の応急処置は、大きく分けて「避難」「冷却」「水分・塩分補給」の3つのステップで進めるとされています。
1. 涼しい場所へ避難させる
熱中症を疑う症状に気づいたら、まず涼しい場所への避難を優先しましょう。
環境省の熱中症環境保健マニュアルでは、風通しのよい日陰やクーラーの効いた室内など涼しい環境へ移動させることが応急処置の第一歩とされています。とにかく直射日光や熱がこもる場所から離れることを最優先に考えましょう。涼しい場所へ移動できたら体を冷やす処置に移ります。
2. 衣服を緩めて体を冷やす
涼しい場所に移動させたら、シャツのボタンを開けるなど衣服を緩めて体から熱を逃がしやすい状態にします。そのうえで皮膚を水で濡らし、うちわや扇風機で扇いで体を冷やす方法もよいとされています。
氷やアイスパックが手元にある場合は、直接肌に当てずにタオルなどでくるんでから使うのがポイントです。冷やす場所としては、首の両側・脇の下・そけい部(太ももの付け根)など太い血管が皮膚の近くを通っている部分が効果的とされています。この部分を冷やすことで皮膚のすぐ下を流れる血液を効率よく冷やせるという考え方です。保冷剤や氷枕も同様にタオルでくるんで当て、専用の道具が手元にない場合は冷えたペットボトルで代用できます。
3. 水分と塩分を補給する
意識がはっきりしていて受け答えに問題がない場合は、冷たい水分を口から補給します。マニュアルでは、冷たい水を本人に持たせて自分で飲んでもらうと案内されています。
特に大量の汗をかいたときは、水分と一緒に塩分を補うことが大切とされ経口補水液やスポーツドリンクや水1Lに食塩1〜2gを溶かした食塩水も適しているとされています。
意識がはっきりしないなど症状が重い場合は救急車の要請も検討が必要ですが、その到着を待つ間も冷却を止めずに続けることが必要とされています。
水分を飲ませてはいけないケース
応急処置の基本は水分と塩分の補給ですが、どんな状態でも口から飲ませてよいわけではありません。
環境省の熱中症環境保健マニュアルでは、呼びかけや刺激に対する反応がおかしい場合や問いかけに答えがない場合(意識障害がある場合)は、無理に水分を飲ませると誤って気道に流れ込んでしまうおそれがあるとされています。
また吐き気を訴えていたり、すでに吐いてしまっていたりする場合は、胃腸の動きがすでに鈍っていると考えられるため口から水分を飲んでもらうのは禁物とされています。このような場合は、自己判断で水分を与えようとせず病院での点滴などの処置につなげることが必要とされています。

ぐったりしている人には、とにかく水を飲ませればいいんだよね?

反応がおかしいときは無理に飲ませてはいけないとされています。気道に入るおそれがあるので、すぐに医療機関へつなぎましょう。
特に乳幼児は自分の言葉で不調を伝えられず自力でうまく水分をとれない場面も多いといえます。赤ちゃんの熱中症対策についてはこちらの記事もあわせてご覧ください。

救急車を呼ぶ判断|迷ったときの目安
『呼びかけに応えない』は迷わず119番
環境省のマニュアルには、熱中症が疑われるときの対応の流れがチェック形式で示されています。めまいや頭痛、吐き気、けいれんといった熱中症を疑う症状があるかを確認します。次に呼びかけや刺激に対して普段どおりに反応するかを確認し、反応がおかしい、答えがない場合は迷わず救急車を要請するとされています。救急車の到着を待つ間も涼しい場所での冷却は続けます。反応があり自力で水分を摂取できる場合は、これまで紹介した応急処置を行いながら様子を見ますが、水分が自力でとれない場合は医療機関の受診が必要とされています。
処置を行っても症状がよくならない場合も同様に医療機関へ、逆に症状がよくなった場合は安静にして十分な休息をとるとされています。搬送する際は倒れたときの状況を知っている人が付き添って発症時の様子を医療スタッフに伝えるとよいでしょう。
迷ったら♯7119(救急安心センター)へ
「救急車を呼ぶべきか、それとも病院に行くべきか」を一人で判断するのが難しいときは、総務省消防庁が案内している救急安心センター事業(♯7119)に相談する方法もあります。
電話をかけると医師や看護師、救急救命士などが症状を聞き取り、対応方法をアドバイスしてくれるとされています。
相談の結果で緊急性が高いと判断された場合は、そのまま119番に転送してもらえるということです。ただし注意点として♯7119は全国41地域での実施にとどまっており、お住まいの地域が対象になっているかどうかは事前に確認しておく必要があります。
出典:総務省消防庁「救急安心センター事業(♯7119)ってナニ?」
やってはいけない・効果がない対処
額の冷却シートでは体は冷えません
熱が出たときに使うジェルタイプの冷却シートを、熱中症の処置にもそのまま使おうと考える方もいるかもしれません。しかし環境省の熱中症環境保健マニュアルでは、額に貼るタイプの冷却シートは体を冷やす効果はあまりなく、熱中症の治療には効果がないとされています。
冷やすべき場所は額ではなく、首の両側・脇の下・そけい部など太い血管が皮膚の近くを通っている部分です。冷却シートに頼らず氷のうや冷えたペットボトルをタオルでくるんで、これらの部位に当てる方法へ切り替えましょう。
回復した直後の活動再開は禁物
応急処置をして症状が落ち着いた後には普段どおりの行動に戻りたくなるかもしれません。しかし環境省のマニュアルに示されたチェックの流れでは、症状がよくなった場合でも安静にして十分に休息をとり回復してから帰宅する方が良いとされています。逆に処置をしても症状がよくならない場合は、様子を見続けるのではなく医療機関を受診することが必要とされています。「よくなったからもう大丈夫」と判断を急がず、体調が落ち着くまで休むことを優先しましょう。
備えておくと安心な冷却グッズ3点
ここまでの応急処置の内容から家庭や外出先で備えておくと安心な冷却グッズを3つ紹介します。
首・脇の下を冷やす「氷のう(アイスバッグ)」
前述のとおり熱中症の冷却は首の両側や脇の下、そけい部といった太い血管が通る部分を冷やす方法が効果的とされています。
環境省のマニュアルでも氷のうのような道具でこれらの部位を冷やす方法が紹介されています。直接肌に当てると冷たすぎることがあるため、タオルなどでくるんでから使うと安心です。冷凍庫で繰り返し使えるタイプを一つ備えておけば、家族の誰かが体調を崩したときにもすぐに対応できます。
外出先でも使える「瞬間冷却剤」
自宅であれば冷凍庫の氷のうや保冷剤を使えますが、外出先や車の中では冷やすものが手元にないことも少なくありません。そんなときに備えておきたいのが、袋を叩いたり揉んだりするだけで冷たくなる使い切りタイプの瞬間冷却剤です。
冷蔵庫や冷凍庫が使えない場面でも取り出してすぐに使えるため、救急セットや外出用のバッグに1つ入れておくと安心です。
濡らして扇ぐ「冷感タオル」
環境省のマニュアルでは、皮膚を水で濡らしてうちわや扇風機で扇ぎ水分の蒸発とともに体温を下げる方法も紹介されています。この仕組みと相性がよいのが、水で濡らして使う冷感タオルです。
首に巻いておくだけでも涼感を得やすく、外出時や屋外での作業中など日常的な暑さ対策としても活用しやすいアイテムといえます。
停電で冷房や冷蔵庫が使えなくなる場面に備えた冷却グッズは、こちらの記事でもまとめて紹介しています。

まとめ:最初の処置が肝心・迷ったら相談窓口へ
熱中症は、症状に気づいた直後の対応によって回復のしやすさが変わってくるとされています。
- 症状の重さはⅠ度からⅢ度の3段階に加え2024年にⅣ度が新設されました。分類の見分けに時間をかけるより、まず行動に移すことが大切
- 応急処置の手順は、涼しい場所への避難・体の冷却・水分と塩分の補給の観点で進める
- 呼びかけへの反応がおかしいときは無理に水分を飲ませず迷わず119番へ連絡
- 救急車を呼ぶか迷ったときは♯7119(救急安心センター)に相談する方法もあり。ただし対象地域かどうかは事前に確認が必要
特に締め切った車内は温度が急激に上がりやすく注意が必要な場所のひとつです。あわせてこちらの記事もご覧ください。

いざというときに落ち着いて動けるように応急処置の手順を家族で確認し備えを見直しておいてはいかがでしょうか。


