避難の際にポケットのスマホや大切な通帳が水でだめになってしまったら…。
台風や大雨での避難は、強い雨のなかを移動したり足元が冠水した道を歩いたりと持ち物が濡れやすい場面の連続です。とくにスマホや貴重品はいざというときに濡れて使えなくなると困るものの代表といえます。この記事では、防災の備えとして用意しておきたい防水ケースや防水バッグを「避難・持ち出し・在宅の水害」の視点から守りたい物ごとに選び方を整理してご紹介します。
なぜ避難や大雨で「防水収納」が必要なのか
水害時にまず守りたいのがスマホです。スマホは家族との連絡、避難情報の確認、119番・110番への通報まで担うといった災害時に得る情報の命綱となっています。水没して使えなくなるとこれらの手段を一度に失いかねません。
次に大切なのが通帳・保険証券・現金・身分証などの貴重品です。これらは被災後の生活再建で必要になる場面が多く罹災証明の申請や保険金の請求などで必要となります。母子手帳やお薬手帳、常備薬も濡れて判読できなくなると困るものです。
内閣府も飲料水や非常食などをリュックにまとめ、貴重品と併せて持ち出せるように準備しておくことをすすめています(内閣府 自然災害への備えは万全ですか?)。ところが、こうした「濡らせない物」を普通のリュックやポケットに入れただけでは強い雨や冠水で簡単に濡れてしまいます。だからこそ持ち出し袋の中身を水から守る「防水収納」を一段階加えておくことが現実的な備えになるといえます。
持ち出し袋にどこまで入れるかで迷ったらまず中身全体から確認してみてください。

濡らせない物リストと防水収納の選び方
防水収納は「何を守りたいか」で選ぶと迷いません。まずは濡らせない物を整理し、それぞれに向く収納を対応させてみましょう。
| 守りたい物 | 想定されるリスク | 向いている収納 |
|---|---|---|
| スマホ・モバイルバッテリー | 水没で連絡・情報手段を失う | 首掛けスマホ防水ケース |
| 通帳・保険証券・現金・身分証 | 濡れ・にじみ・紛失 | 小型の防水ポーチ |
| 母子手帳・お薬手帳・書類 | 濡れて判読できなくなる | A4が入る防水ポーチ |
| 着替え・タオル・食料 | 濡れて使えなくなる | 大容量の防水ドライバッグ |
守る物が決まったら次の4つの軸で具体的な製品を見ていきます。
① 防水の規格(IPやIPXの表示)
電子機器向けの防水ケースには「IPX7」「IPX8」といった表示があります。IPX7は一定の水深・時間の水没に耐えるとされIPX8はそれ以上の条件に対応する等級です。バッグ類では「IPX」表示がなく「防水」「耐水」とだけ書かれている製品も多いのでどの程度の水濡れを想定した品なのかを確認しておくと安心です。
② 開け閉めの方式
ジッパー式は小物の出し入れがしやすくスマホや書類向きです。ロールトップ式は袋の口をくるくると巻いて留める方式で容量を変えやすく浸水に強いとされています。大きな荷物をまとめるならロールトップ式が向いています。
③ サイズ
守りたい物に合わせて選びます。スマホ用、A4書類が折らずに入るポーチ、20〜30L前後の大型バッグと用途ごとにサイズが分かれます。
④ 素材と耐久性
TPUやターポリンといった丈夫な素材だと繰り返しの使用や多少の擦れにも対応しやすいです。

スマホはジッパー付きの保存袋に入れておけば十分なんじゃないの?

一時的な防滴にはなりますが水没や長時間の雨には心もとないかもですね。繰り返し使うならIPX8のように水没に強い表示のある専用ケースの方がより安心ですよ。
① スマホを守る防水ケース
避難時にまず確保したいのがスマホ用の防水ケースです。なかでも首から下げられるネックストラップ型は両手が空くため、荷物を持ったままの移動や子どもの手を引く場面でも使いやすいです。
選ぶときはIPX8など水没に強い等級か、ケースに入れたまま画面の操作や通話・撮影ができるかを確認しておくとよいでしょう。タッチ感度や指紋・顔認証がそのまま使える製品だといざというときに取り出さずに済みます。水に浮くタイプなら川や冠水した場所に落としても見つけやすいとされています。
普段使いでは海やプール、アウトドアでも活躍できるので家族で1つずつ用意しておくと無駄になりにくいアイテムです。
避難で両手が空く首掛けタイプ
なお車を運転中に冠水へ巻き込まれたときの備えは脱出ハンマーなどと合わせて別の記事で詳しくまとめています。車載用の防水バッグはこちらをご覧ください。

② 貴重品・書類を守る防水ポーチ
通帳・保険証券・現金・身分証、母子手帳やお薬手帳といった「濡らせない書類」は1つの防水ポーチにまとめておくと避難時にあわてず持ち出せます。
選ぶときのポイントはA4サイズの書類が折らずに入るか、ジッパーに止水加工があるか、中身が見える透明窓があるかあたりでしょうか。首から下げられるタイプなら移動中も身につけておけます。普段は引き出しにまとめておき避難のときはポーチごと持ち出すという使い方が分かりやすいでしょう。
ここで気をつけたいのが防災ポーチとの役割の違いです。防災ポーチは「持ち歩く防災用品の中身をまとめる」もので防水ポーチは「中身を濡らさないために守る」ものです。両方を組み合わせると普段の持ち歩きと水濡れ対策の両方に対応できます。防災ポーチに何を入れるかはこちらの記事を参考にしてみてください。

通帳や書類をまとめて守る防水ポーチ
③ まとめて守る防水ドライバッグ
着替え・タオル・食料・電子機器など、量のある荷物をまとめて守りたいときは大容量の防水ドライバッグが便利です。袋の口を数回巻いて留めるロールトップ式が主流で容量に合わせて閉じ方を調整できます。
容量は20〜30L前後が持ち出し袋の中身をまとめる目安とされています。ショルダー型やリュック型なら背負って移動できるため両手を空けられます。非常持ち出し袋をそのまま中に入れて防水リュックとして使ったり普段のリュックの内側に入れるインナーバッグとして使ったりと、応用の幅も広いアイテムです。
ただし容量が大きいほど中身も重くなりがちです。背負って無理なく動ける重さに抑えることを意識して選んでみてください。
防水バッグの内側に入れるリュック本体そのものを選び直したい場合は、背負いやすさや容量の見方をこちらで詳しく解説しています。

持ち出し袋ごとまとめて守る防水ドライバッグ
避難所へ持っていく物の優先順位はこちらの記事で整理しています。

防水収納を使うときの注意点
防水収納は便利ですが過信は禁物です。買って満足するのではなく以下のことを確認しておきましょう。
- 規格表示は試験条件の目安:IPXの等級は一定の条件で試験した結果です。使い方や経年でパッキンが劣化すると表示どおりの性能を保てないことがあります
- 閉め方を守る:ロールトップ式は規定の回数だけ巻く、ジッパーは最後まで閉めるといった基本を守らないと水が入りやすくなります
- 買ったら一度ためす:中にティッシュや紙を入れて水につけ濡れていないかを確かめておくと安心です
- 熱や直射日光に注意:高温や強い日差しでフィルム素材が変質することがあるので保管場所にも気を配りましょう

IPX8って書いてあれば何も気にしなくていいんだよね?

試験での目安なので使い方しだいで水が入ることもあるとされています。買ったら一回は試しに中に紙を入れて水につけて閉め方を練習しておくと安心ですよ。
家にある物での代用と平時の備え
専用品をそろえる前でも家にある物で応急的に備えることはできます。
最も手軽なのはジッパー付きの保存袋を二重にしてスマホや書類を入れる方法です。衣類用の圧縮袋やポリ袋を輪ゴムで縛る方法もあります。ただしこれらはあくまで一時的な防滴で水没や長時間の雨には心もとないとされています。繰り返し使うならやはり専用の防水収納のほうが安心です。
あわせて考えておきたいのが紙そのものに頼りすぎない備えです。保険証券・通帳・本人確認書類などはスマホで写真に撮ってクラウドに保存しておくと、原本が濡れたり失われたりしても内容を確認しやすくなります。家族と共有しておけば、離れていても見られるという利点もあります。紙の原本は防水ポーチへ、控えはデータへと二重に備えておく考え方です。
またせっかく用意した防水収納もいざというときに迷っては意味がありません。持ち出し袋のなかで「濡らせない物」を防水ポーチにまとめておけば避難のときにあわてずに済みます。
なお、ここで挙げたのは避難時に「持ち出す物」の守り方です。一方で権利証や契約書、思い出の品など、持ち出さず家に残す貴重品は、火災や盗難から守る家庭用金庫が向いています。選び方や置き場所のコツはこちらの記事を参考にしてみてください。

在宅で水害に備える場合は、家財や書類を上の階へ移すなど家のなかでの浸水対策とも組み合わせてみてください。

まとめ
避難や大雨で「濡らせない物」を守る防水ケース・防水バッグの選び方をご紹介しました。最後に要点を振り返ります。
- 守る物から選ぶ:スマホ・貴重品・書類・大きな荷物で向く収納が変わる
- ① スマホ:両手が空く首掛けの防水ケース。操作できるか・水に浮くかを確認
- ② 貴重品・書類:A4が入る防水ポーチにまとめる。防災ポーチとは役割が違う
- ③ 大きな荷物:ロールトップ式の防水ドライバッグで持ち出し袋ごと守る
- 過信しない:規格は目安。閉め方を守り、買ったら一度ためす
- 代用とデータ化:保存袋での応急対応や、書類の写真保存も組み合わせる
すべてを一度にそろえる必要はありません。まずはスマホ用の防水ケースを1つ、今年の台風シーズン前に用意するところから防災の防水対策を始めてみてはいかがでしょうか。


