「いかのおすし」ということばをお子さんから聞いたことありますか?
防犯の世界には覚えやすく行動に移しやすいように工夫された「標語」や「合言葉」がたくさんあります。学校や地域、警察が子どもから大人まで広く防犯を呼びかけるために使ってきたものです。
この記事では、子どもを守る合言葉と住まいを守る合言葉を分けて整理し、それぞれの意味と使い方をまとめました。家族で覚えていざというときの行動につなげるヒントとしてご活用ください。
防犯の標語・合言葉とは
防犯の標語は、大切な行動を短いことばにまとめ、とっさのときでも思い出せるようにした合言葉です。
危険な場面では、人はあわててしまい頭で考えたとおりに動けないことがあります。そんなときに普段から口にしている合言葉があれば体が自然に動きやすくなります。これは防災の「津波てんでんこ」などと同じ考え方です。短くてリズムがよく、子どもでも覚えられる――そこに防犯標語の強みがあります。
こうした合言葉は、警察や学校、地域がくり返し呼びかけることで世代を越えて受け継がれてきました。難しい防犯理論を覚えるのではなく、ひとことの語呂で「いざというときの行動」を体にしみ込ませる。それが標語のねらいのひとつです。
大切なのは覚えて終わりにしないことです。標語は知識というよりもいざというときに体を動かすためのスイッチのようなものなので、声に出して時々は意味を確かめ合うことで合言葉ははじめて「使える備え」になります。次に子ども向け・大人向けに分けて見ていきます。
子どもを守る防犯標語
まずは子ども向けの代表的な合言葉から見ていきましょう。いずれも知らない人への対応を中心に、いざというときの行動を5つほどにしぼって覚えやすくしているのが特徴です。5つに絞られているのには理由があります。とっさのときに思い出せる数は限られているため、あれもこれもと詰め込むより厳選した行動をくり返し口にするほうが、いざというときに体が動きやすいからです。
いかのおすし
もっとも広く知られているのが「いかのおすし」です。2004年(平成16年)に警視庁と東京都が考案した子ども向けの防犯標語です。次の5つの行動の頭文字を取っています。
- いか:知らない人について「いかない」
- の:知らない人の車に「のらない」
- お:「おお声」を出す
- す:「すぐ逃げる」
- し:大人に「しらせる」
食べ物の名前にかけることで子どもがすぐに思い出せるよう工夫されています。誕生した2004年ごろは子どもが被害にあう事件が社会問題になっていた時期でした。インパクトのある語呂でしっかり覚えてもらおうという工夫が今では全国に広まっています。意味や使い方は専用の記事でくわしく紹介しています。

つみきおに
「つみきおに」も子どもの行動をまとめた合言葉です。地域や資料によって少しずつ表現が異なりますが、おおむね次のような意味で使われます。
- つ:知らない人に「ついていかない」
- み:「みんなといつも一緒」にいる
- き:出かけるときは家の人に「きちんと知らせる」
- お:危ないときは「おお声で助けを呼ぶ」
- に:その場から「にげる」
「いかのおすし」と重なる部分も多いのでお子さんが覚えやすいほうを家庭で選んで使うとよいでしょう。地域や学校によって採用している合言葉が違うこともあります。
はちみつじまん
「はちみつじまん」は子どもが不審者を見分けるための合言葉です。声をかけてくる相手のあやしい様子を覚えておくためのものです。
- は:「はなしかけてくる」
- ち:「ちかづいてくる」
- み:じっと「みつめてくる」
- つ:あとを「ついてくる」
- じ・ま:「じっとまっている」
- ん:そんな人がいたら「ようちゅうい(注意)」
あやしい人に気づいたら、距離をとってすぐに安全な場所や大人のいるほうへ向かいましょう。「はちみつじまん」は危険を早めに察知する力を育てるための合言葉だといえます。なお表現は資料によって少しずつ違うことがあるので、お住まいの地域で使われているものを確認してみてください。

合言葉がいくつもあって覚えるのが大変そうだね。

全部を完璧に覚える必要はありませんよ。まずは「いかのおすし」をひとつ、家族で声に出してみる。それだけでもとっさのときの行動が変わってきます。
子どもの防犯は、合言葉に加えて防犯ブザーや見守りの道具も合わせると安心です。通学路の安全とあわせて次の記事も参考にしてみてください。


大人・住まいを守る合言葉
防犯の合言葉は子どもだけのものではありません。空き巣や特殊詐欺など大人がねらわれる犯罪も少なくないからです。大人や住まいを守るための合言葉も見ていきましょう。
ワンドア・ツーロック
「ワンドア・ツーロック」は、1つのドアに鍵を2つ付けるという空き巣対策の合言葉です。空き巣は侵入に手間取ることを何より嫌うため、鍵が2つあって時間がかかりそうだと分かるだけで、多くはあきらめるといわれます。「鍵が2つある家」という見た目そのものが抑止力になるわけです。玄関だけでなく勝手口や窓にも同じ考え方が応用できます。
戸締り用心、火の用心
「戸締り用心、火の用心」は古くから夜回りなどで唱えられてきた呼びかけです。火事への注意と同時に戸締りをして空き巣に備えるという防火と防犯の両方をひとことで言い表しています。昔ながらの合言葉ですが、「出かける前・寝る前に戸締りを確認する」という基本は今もまったく変わりません。拍子木とともに「火の用心」と聞こえてくる光景は減りましたが、現在でも戸締りのチェックや防犯ブザーといった形で今に受け継がれているといえるでしょう。
電話でお金の話が出たら、いったん切る
オレオレ詐欺や還付金詐欺といった「特殊詐欺」も大人をねらう身近な脅威です。各地の警察は合言葉のように 「お金やキャッシュカードの話が出たら、いったん電話を切る」「その場で決めず、家族に相談する」 という行動を呼びかけています。「自分はだまされない」と思っている人ほどねらわれやすいともいわれます。あやしい電話は一人で抱え込まず、家族や警察相談専用電話「#9110」に相談する
地域の見守りと不審者情報
防犯は、各家庭の取り組みだけでなく地域ぐるみで高まります。多くの自治体や学校が不審者の出没を知らせる「不審者情報メール」や防犯アプリを用意しています。登録しておくと近所で起きた出来事を早めに知ることができ子どもへの声かけにも生かせます。
「あいさつが交わされる地域は、よそ者が目立つため空き巣に嫌われる」ともいわれます。ご近所との何気ない声のかけ合いも地域を守る立派な合言葉のひとつなのかもしれません。
一人暮らし・女性の防犯の心がけ
ひとり暮らしの方や女性に向けては合言葉というより「ふだんの心がけ」として広まっているものがあります。
- 「ただいま」と声を出して帰る:誰かが待っているように見せてひとり暮らしだと気づかれにくくする。
- 宅配は相手を確かめてから:チェーンをかけたまま応対し不在時は宅配ボックスを活用する。
- 洗濯物や表札で、性別や人数を出しすぎない。
- 帰り道はスマホに気を取られず、周囲に気を配る。
これらも「いざというときに身を守る」という点で防犯標語と同じ役割を果たします。特別な道具がなくても普段の所作を少し変えるだけで「すきの少ない暮らし」に近づけます。一人暮らしを始めたばかりの方はこの中のひとつを今日から意識してみるとよいでしょう。
標語を「使える備え」にするには
合言葉は覚えただけでは力を発揮しません。家族で声に出して約束ごとにしておくことで初めて生きてきます。
- 子どもと一緒に「いかのおすし」を唱えてみる。
- 「もし知らない人に声をかけられたら?」と普段から話し合っておく。
- 大人は「出かける前のダブルロック」を家族共通のルールにする。
- 玄関や窓の戸締りを外出前と就寝前にもう一度確かめる。
伝えるときは年齢に合わせるのがコツです。小さなお子さんには「いかのおすし」を遊びの感覚でくり返し、小学生になったら「こんなときどうする?」と一緒に考える練習をしてみましょう。頭ごなしに怖がらせるよりも自分で判断する力が育ちます。
おすすめは「わが家の合言葉」を決めておくことです。たとえば「知らない人に声をかけられたら、その場を離れて家の人に電話する」など具体的な約束をひとつ決めておくと、子どもも迷いません。
防犯の合言葉は防災の備えと根っこは同じです。「もしも」を家族で話題にしておくことが、子どもにとっても大人にとっても安心材料になります。ふだんの暮らしのなかで時々思い出して確認する。その積み重ねがいざというときの行動につながります。
まとめ
防犯の標語・合言葉を子ども向けと大人向けに分けて見てきました。
- いかのおすし:知らない人についていかない等、子どもの基本行動(警視庁・東京都が考案)
- つみきおに:ついていかない・みんなと一緒など行動の合言葉
- はちみつじまん:あやしい人を見分けるための合言葉
- ワンドア・ツーロック:1ドア2ロックで空き巣に備える大人の合言葉
- 戸締り用心、火の用心:防火と防犯をひとことで伝える昔ながらの呼びかけ
- 地域の見守り:あいさつや不審者情報メールも地域を守る合言葉
どれも覚えただけでは力になりません。家族で声に出してときどき意味を確かめ合うことで、初めて「使える備え」になります。まずは家族で合言葉を声に出すことから始めるのはいかがでしょうか。


